「もし明日、パートナーが突然いなくなったら、あなたは“普通の生活”ができますか?」──「男は外で稼ぎ、女は家を守る」。そんな価値観を疑うことなく生きてきた安田さん(仮名・74歳)の日常は、専業主婦だった妻の死後、一気に崩れ去ります。CFPの伊藤寛子氏が安田さんの事例をもとに、「老後に本当に必要なもの」について解説します。
「三食昼寝付き」と揶揄していた専業主婦妻が急逝。残された74歳夫「お茶も出せない」「部屋はゴミだらけ」…貯蓄6,000万円、“稼げる男”の成れの果て【CFPが解説】
老後のQOL維持のために必要なのは「お金」だけでなく「生活力」
多くの人は、老後に必要なのは「お金」だと考えがちです。もちろん、それは間違いではありません。しかし、お金だけでは不十分です。軽視されがちですが、老後には個々人の「生活力」が欠かせません。
料理、洗濯、掃除、買い物、役所手続き、医療機関とのやり取り。これらを自分でこなせるかどうかで、1人になったときの生活の質は大きく変わります。資産があっても、それを使いこなす生活力がなければ、老後のQOL(生活の質)は著しく低下します。
安田さんはまさにその状態で、
「まさか、こんな形で1人になるなんて思ってもいませんでした。自分が先に死ぬものだと、どこかで思い込んでいたんでしょうね……」
そうつぶやきました。
老後のリスク管理は、老後資金準備だけではありません。「生活を維持し続ける力」も併せて養うことが、資産と生活の防衛には欠かせません。
「生活力」を身に付けるための3つのステップ
では、「生活力」を身に付けるには、何から始めればいいのでしょうか。現役世代も、シニア世代も、今から取り組める3つのステップを紹介します。
① 家事を分担する
料理、洗濯、掃除を部分的にでも担当してみる。週1回からでもいいので、「やったことがある」という経験がいざという時の大きな助けになります。特に料理は、「最低限の自炊」ができるだけで健康面と生活満足度が大きく変わります。
② 家計の見える化
銀行口座、保険、固定費などの一覧を1枚の紙やデータにまとめる。夫婦のどちらが見てもわかる状態を作っておくことが大切です。近年ではネット銀行や証券口座、クレジットカードなど、マイページで管理をすることが増えていることから、IDとパスワードの保管も必要です。
③1人暮らしのシミュレーション
もし1人になったら、どんな生活費がかかり、どんな暮らしになるのか。具体的に想像してみることで、備えるべきことが見えてきます。ゴミ出しの曜日、家電の使い方、緊急連絡先など、いざという時に迷わないために、個々人が把握しておくことが大切です。