「もし明日、パートナーが突然いなくなったら、あなたは“普通の生活”ができますか?」──「男は外で稼ぎ、女は家を守る」。そんな価値観を疑うことなく生きてきた安田さん(仮名・74歳)の日常は、専業主婦だった妻の死後、一気に崩れ去ります。CFPの伊藤寛子氏が安田さんの事例をもとに、「老後に本当に必要なもの」について解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「三食昼寝付き」と揶揄していた専業主婦妻が急逝。残された74歳夫「お茶も出せない」「部屋はゴミだらけ」…貯蓄6,000万円、“稼げる男”の成れの果て【CFPが解説】
失って初めて気がついた「誰でもできること」ではなかったという現実
和子さんが亡くなってからというもの、安田さんの生活は驚くほどのスピードで荒廃していきました。
まず直面したのは、「モノの場所」がわからないという現実です。訪れた弔問客にお茶を出そうにも、どこに茶葉や湯吞がしまってあるのかがわからない。急須の扱いにも戸惑い、まともにお客様をもてなすこともできません。
家事を一切してこなかった安田さんは、家電を操作することもありませんでした。洗濯機のボタン操作、洗剤の量、入れる場所すらわかりません。説明書を探し出すのにも一苦労です。
ゴミ出しの日を把握していないため、家中にゴミが溜まっていきます。掃除はどこから手をつけていいかわからず、気づけば部屋は荒れ放題になっていました。
さらに困ったのが、役所や銀行の手続きでした。年金、保険、公共料金、税金……何をどこに連絡すればいいのか、まったく見当がつきません。
安田さんは、自分の年金額こそ把握していましたが、通帳や印鑑の保管場所もわかりません。妻が管理していた預金口座の暗証番号も、当然知るわけもありません。
確かに経済力はありましたが、それを使ったり管理したりするスキルが完全に欠けていたのです。