「もし明日、パートナーが突然いなくなったら、あなたは“普通の生活”ができますか?」──「男は外で稼ぎ、女は家を守る」。そんな価値観を疑うことなく生きてきた安田さん(仮名・74歳)の日常は、専業主婦だった妻の死後、一気に崩れ去ります。CFPの伊藤寛子氏が安田さんの事例をもとに、「老後に本当に必要なもの」について解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「三食昼寝付き」と揶揄していた専業主婦妻が急逝。残された74歳夫「お茶も出せない」「部屋はゴミだらけ」…貯蓄6,000万円、“稼げる男”の成れの果て【CFPが解説】
ついに娘に助けを求めたが…まさかの言葉に絶句
料理もしたことがない安田さんにとって、食生活の変化も深刻でした。最初の数日は「たまには外食もいいだろう」と近隣の飲食店へ足を運びましたが、独りでテーブルを囲む寂しさに耐えられず、次第に足が遠のきました。
結局、近所のスーパーで買った弁当をつつく毎日が始まりました。妻が作ってくれていた、品数豊富な食事が思い起こされます。
「あんなもの、主婦なら誰でも作れると思っていた……」
栄養バランスを考え抜かれた妻の献立が、いかに贅沢なものだったか……。自分で台所に立ってみても、冷蔵庫の中の食材をどう組み合わせればいいのかわかりません。炊飯器の使い方すらわからず、結局弁当に戻ります。
耐えかねた安田さんは、近所に住む長女に電話をかけました。
「たまには飯でも作りに来てくれ。洗濯機の調子も悪いんだ」
しかし、返ってきたのは、思いもよらぬ厳しい言葉でした。
「お母さんを家政婦みたいに扱ってきたのはお父さんでしょ。今度は私にやってもらおう、なんて考えないで。自分のことは自分でやってよ」
言葉を失う安田さんに、娘は続けました。
「お父さん、自業自得よ。お母さんがどれだけ働きたいって言っても、『女は家にいろ』って封じ込めたのはお父さんでしょ」
受話器を置いた安田さんは、しばらく動けませんでした。自分が築いてきたと思っていた「幸福な家庭」は、妻の忍耐と献身の上に成り立っていたことに気づかされたのです。