「銀行員だったら当然、お金のことは詳しいはず……」多くの人が、そう思うのではないでしょうか。しかし現実には、金融の知識があることと自分のお金を守れることは、必ずしもイコールではありません。むしろ知識があるからこそ判断を誤り、老後の大切な資金を失ってしまうケースも。本記事では、ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が、安定した老後設計を描く元銀行員が直面することになった、「想定外の事態」について事例と共に解説します。
自分が恥ずかしい…老後資金1,100万円喪失の60代元メガバンカーが嘆き。「お金の知識はある」自信満々が一転、“銀行員としての面目丸つぶれ”のワケ【CFPが解説】
金融知識を持っていても「過信」には要注意
銀行員は資産を失うような失敗はしない。そんな印象があるでしょう。ですが、実はそうとも言い切れません。田島さんのように、金融知識を持ちながら投資で大きな損失を出してしまうケースも実際に存在します。
田島さんが選んだ仕組債は、デリバティブ取引についての高度な知識を持った人が、徹底したリスク管理のもと目的に合わせて組成すれば、安定的にリターンを得られる可能性が高い選択肢ではありますが、その仕組みは非常に複雑です。
過去には大きな損失を抱える人が続出したことが問題となったこともあります。預金金利が低すぎる今、「もう少し利回りが欲しい」「でも株式だとリスクが大きすぎる」といった人にとって、利回りが見えやすい商品として選択肢に浮上することもあります。
多少のリスクを取りつつ、余剰資金で仕組債を限定的に運用する手もなくはありません。ですが、「こんなことは怒らないだろう」と考えるのは危険です。ましてや、仕組債のことがよく理解できていないのであれば、要注意。自分が理解できないものに大切な老後資産を賭けるようなことは避けるべきです。
定年後の生活の基盤となる老後資金については、長期分散投資など基本に忠実な「守りの投資」を行い、積極的にリターンを狙う「攻めの投資」は、あくまでもそれ以外の余剰資金で行うという考え方が基本です。
老後の収支管理、先々の見通しをしっかりと立てた上で、適切な商品を選び運用する。そうすれば、今回のようなケースを事前に防げる可能性が高くなります。
守りの資産は「基本に忠実」に運用しよう
お金の知識があっても、その知識を過信してしまうことで、判断を誤ってしまうケースはあります。田島さんの失敗は、過度なリスクを取ったことによるものではありません。「守りの資産運用」のつもりで選んだ商品が、実際には老後資金を守る構造になっていなかったこと、大切な老後資金の大半を投じてしまったといった点にあります。
老後資金に求められるのは、生活の基盤を揺るがさない確実性です。田島さんと同じ轍を踏まないためには、商品名やイメージではなく、その中身とリスクの出方を理解すること。「本当に守れる資産かどうか」を見極めることが、何より重要だと言えるでしょう。
投資には様々なタイプがあり、なかには「守りの投資」では実現が難しいリターンを得ることができるものもあります。そういった情報を目にすると、ついつい守りの姿勢を疎かにしてしまい、リスク軽視で高リターンの投資に手を出してしまいがちですが、いかに知識があっても「守りの資産」は基本にできるだけ忠実に。リスクの高い投資は避けることが重要です。
小川 洋平
FP相談ねっと