キャッシュレス化が進む現代でも、現金主義を貫く高齢者は一定数存在します。「いつでも使える」「目にみえる」という安心感の一方で、当然ながらリスクも存在します。本記事ではAさんの事例とともに、現金保管の落とし穴について、社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が解説していきます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
「銀行は信用できない」床下に“タンス預金2,000万円”を隠した年金月7万の80歳父…リフォーム業者も長女も驚愕した〈札束の成れの果て〉。日本銀行に持っていってさらなる驚愕【FPが解説】
日本銀行に持っていくと…
絶望するAさんですが、2,000万円という大金を前に諦めるわけにはいきません。ネットで日本銀行でのお金の引換えについて調べました。ボロボロになった紙幣のかけらをかき集め、日本銀行へ持参しました。しかし、原形をとどめないほど粉々になった紙幣の多くは、「面積」として認定される基準を満たすことが困難でした。鑑定の結果、引換えできた金額はわずか「20万円」ほど。実際に2,000万円あったのかどうかはわかりませんが、元本の実に100分の1です。
保証ゼロの現金
「銀行は信用できない」と現金を信じていた父でしたが、自宅にはリスクがあり、なんの保証もありません。これは「1%未満の銀行破綻リスクを恐れて、100%のリスク(紛失・劣化・盗難)を背負い込んだ」といわざるを得ないでしょう。その結果、資産のほとんどを失ってしまいました。
「こんなことなら、いくつかの銀行に分散して預けるか、少額からでも投資をするよう説得しておけばよかった……」Aさんは言葉を失いました。確かにペイオフでは1,000万円ずつ別の銀行に預ければ、全額保護されるため、今回のように2,000万円あったのであれば、A銀行に1,000万円、B銀行に1,000万円とわけて預金するだけで、元本割れのリスクを減らすことができました。手間は手続きの億劫さと、通帳が2冊になる程度です。
災害や特殊詐欺のリスクだけでなく、こうした物理的な消失リスクもあるタンス預金。もし心当たりがある場合は、一度、その保管方法を再検討してみてはいかがでしょうか。
〈参照〉
経済産業省:消費者実態調査の分析結果
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/pdf/005_05_00.pdf
金融庁:預金保険制度
https://www.fsa.go.jp/policy/payoff/
日本銀行:損傷銀行券の引換基準
https://www.boj.or.jp/about/services/bn/sonsyo.htm
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
共同代表