「孫のためなら、できることは全部してあげたい」。そう願うのは、祖父母としてごく自然なことです。時間にも心にも少しゆとりが生まれる老後だからこそ、孫の存在は新たな生きがいにもなります。しかし、その善意が暴走すると、気づかぬうちに自身の首を絞めてしまう可能性も……。69歳女性の事例を見ていきましょう。
愛する孫のためだもの…年金月13万円・貯金3,000万円の69歳女性、念願の初孫に“全力の愛”を注いだ結果、長男の嫁から告げられた「まさかの一言」
突発的な支出を考慮した“リアルに必要な金額”とは
厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費、自己負担額及び保険料の比較(令和4年度実績)」によると、高齢期の医療費の自己負担平均額は、年間7万円~9万円でした。加えて介護が必要となった場合、居宅サービスを限度額まで利用したとすると、自己負担額は月2万円~3万円ほど。
さらに、家の修繕費や家電の買い替えなど、突発的な支出として500万円ほどは備えておきたいところです。
以上を整理すると、
・年金では足りない生活費:約650万円
・医療費:約150万円
・介護費:約150万円(介護期間を5年間と仮定して算出)
・突発的な支出:500万円
■合計……約1,450万円
合計で約1,450万円となります。ただし、これは平均寿命である87歳までの試算です。つまり、87歳を超えて元気に暮らせばさらに必要になりますし、介護費用が増える可能性もあります。
「貯金3,000万円」は一見十分に思えますが、「いつまで生きるかわからない」「どんな医療や介護が必要になるかわからない」という不確実性を考えると、決して余裕があるとは言い切れません。
さらに、ここに子や孫への継続的な援助が加われば、老後資金は想像以上のスピードで減っていってしまいます。
サトコさんの場合、たとえ3,000万円の預貯金があっても、子や孫への援助は月2万円程度が上限と考えるのが無難でしょう。
「子・孫への援助」に必要な線引き
子や孫に援助を検討する際、ひとつの目安としてほしいのが「援助しても、自分の生活水準が変わらないかどうか」です。サトコさんの事例は決して特別なケースではありません。「孫がかわいい」「助けになりたい」という気持ちはごく自然な感情でしょう。
しかし、老後資金は“余っているお金”ではなく、これからの自分自身の人生を支える大切な土台です。援助を続けることで自身の生活に不安が生じるなら、それは立ち止まって考えるサインかもしれません。
お金の援助を控えたとしても、孫と過ごす時間は変わりません。話を聞くこと、見守ることは同じように続けられます。
長い目で見れば、無理をせず自分の生活を守ることが、家族への思いやりでもあるのです。
石川 亜希子
CFP