突発的な支出を考慮した“リアルに必要な金額”とは

厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費、自己負担額及び保険料の比較(令和4年度実績)」によると、高齢期の医療費の自己負担平均額は、年間7万円~9万円でした。加えて介護が必要となった場合、居宅サービスを限度額まで利用したとすると、自己負担額は月2万円~3万円ほど。

さらに、家の修繕費や家電の買い替えなど、突発的な支出として500万円ほどは備えておきたいところです。

以上を整理すると、

・年金では足りない生活費:約650万円

・医療費:約150万円

・介護費:約150万円(介護期間を5年間と仮定して算出)

・突発的な支出:500万円

■合計……約1,450万円

合計で約1,450万円となります。ただし、これは平均寿命である87歳までの試算です。つまり、87歳を超えて元気に暮らせばさらに必要になりますし、介護費用が増える可能性もあります。

「貯金3,000万円」は一見十分に思えますが、「いつまで生きるかわからない」「どんな医療や介護が必要になるかわからない」という不確実性を考えると、決して余裕があるとは言い切れません。

さらに、ここに子や孫への継続的な援助が加われば、老後資金は想像以上のスピードで減っていってしまいます。

サトコさんの場合、たとえ3,000万円の預貯金があっても、子や孫への援助は月2万円程度が上限と考えるのが無難でしょう。

「子・孫への援助」に必要な線引き

子や孫に援助を検討する際、ひとつの目安としてほしいのが「援助しても、自分の生活水準が変わらないかどうか」です。サトコさんの事例は決して特別なケースではありません。「孫がかわいい」「助けになりたい」という気持ちはごく自然な感情でしょう。

しかし、老後資金は“余っているお金”ではなく、これからの自分自身の人生を支える大切な土台です。援助を続けることで自身の生活に不安が生じるなら、それは立ち止まって考えるサインかもしれません。

お金の援助を控えたとしても、孫と過ごす時間は変わりません。話を聞くこと、見守ることは同じように続けられます。

長い目で見れば、無理をせず自分の生活を守ることが、家族への思いやりでもあるのです。

石川 亜希子
CFP