「孫のためなら、できることは全部してあげたい」。そう願うのは、祖父母としてごく自然なことです。時間にも心にも少しゆとりが生まれる老後だからこそ、孫の存在は新たな生きがいにもなります。しかし、その善意が暴走すると、気づかぬうちに自身の首を絞めてしまう可能性も……。69歳女性の事例を見ていきましょう。
愛する孫のためだもの…年金月13万円・貯金3,000万円の69歳女性、念願の初孫に“全力の愛”を注いだ結果、長男の嫁から告げられた「まさかの一言」
もうやめてください…義娘が「援助を拒否」したワケ
そんな日々が数ヵ月続いたある日のこと。いつものように、帰り際にお金を渡そうとしたサトコさんに、ナツミさんが少し言いにくそうに口を開きました。
「お義母さん……気持ちは本当にうれしいんですが、もうやめてください。正直、遊びに来づらくなってしまいます」
「え、どうして? 足りないってこと?」
そう聞くと、ナツミさんはあわてて首を振ります。
「いえ、むしろ逆です。毎回こんなに援助してもらって、本当に申し訳ないです。実は、『お義母さんの生活も考えなさい』って実家の母に怒られちゃいまして……」
さらに、こう続けました。
「お義母さん、お仕事も辞めたと伺いましたし、病院代もかかってますよね? お義母さんのほうこそ、なにかお困りのことはないですか?」
その言葉に、サトコさんはハッとしました。
思い返してみれば、孫が生まれてからの数ヵ月、預金残高は驚くほどのペースで減っていました。「愛する初孫のためだもの」と注いできた全力の愛情が、気づかぬうちに自分の老後資金を圧迫し始めていたのです。
なにもしなくても「月3万円」の赤字
では、69歳ひとり暮らしの女性には、生涯どれくらいのお金が必要になるのでしょうか。現在、日本人女性の平均寿命は87歳。サトコさんが平均寿命まで生きると仮定すると、あと18年ほどあります。
また総務省「家計調査報告(令和6年)」によると、65歳以上の単身無職世帯における家計支出は、消費支出(いわゆる生活費)が平均約14万9,000円、非消費支出(税金や社会保険料)が平均約1万2,600円となっています(計16万1,600円)。
月約13万円の年金で暮らすサトコさんの場合、支出が平均的であっても毎月約3万円の赤字となり、気づかぬうちに預貯金を取り崩す生活になります。3万円×12ヵ月×20年=720万円ですから、生活費ベースで約650万円を預貯金から補填する計算です。
ただし、これはあくまで生活費だけを見た場合の話です。実際には、医療費や介護費、突発的な支出といった要素も加わります。