多くの人が直面する親の介護。経済的に、子世代が介護費用を負担することも珍しくありません。しかし一度歯車が狂い始めると、現役世代の生活基盤さえも根底から揺さぶることも。良かれと思った選択肢が、結果として自身の首を絞めてしまう――ある女性のケースから、私たちが直面する介護破綻のリスクとその防衛策について考えます。
「お母さんの介護、もう無理…」月収52万円・48歳女性課長、82歳認知症母の施設費用「月30万円」に悲鳴。ついに自分の老後資金に手を出した末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

「手厚いケアを」と願った娘の誤算…月30万円の重圧に消える貯蓄

都内の専門商社で課長職を務める佐藤佳代さん(48歳・仮名)。彼女は独身で、自分一人が生活していくには十分な収入を得ていました。

 

30年ローンで購入した都心のマンションで、母・よし子さん(82歳・仮名)と同居していましたが、認知症が進行したことでその平穏な生活は一変します。

 

「最初は物忘れ程度でしたが、次第に火の不始末や徘徊が始まりました。仕事中に警察から電話がかかってくることもあり、心身共に限界を感じたんです」

 

訪問介護などを利用して仕事との両立を図ったものの、やがて限界に達し、佳代さんは母を施設へ預ける決断を下しました。選んだのは、自宅から通いやすく、認知症ケアに定評のある民間の有料老人ホームです。

 

入居一時金に加え、月々の支払額は管理費や食費、介護サービスの上乗せ分などを含めて月約30万円。母の年金は月8万円程度だったため、不足分の20万円強は佳代さんが全額負担することになりました。

 

「母には色々と苦労をかけてきたから、手厚い介護を受けさせてあげたいという一心でした。でも、自分の手取り額から毎月20万円以上が消えていく生活が、これほど苦しいとは想像していませんでした」

 

佳代さんの月収は52万円、手取りは41万円ほどだといいます。そこから月20万円強の介護費用を引くと、残りは20万円弱。ローンの返済や光熱費、通信費、さらに食費を差し引くと、手元にはほとんど何も残りません。

 

ときに赤字になる月もあり、佳代さんは自身の老後資金として蓄えていた貯蓄を取り崩すようになりました。

 

「入居から2年で、500万円あった貯金もどんどん減っていく。母が快適に暮らしているのは嬉しいことですが、このままお金がもつかどうか。自分自身の老後もありますし……」

 

万一、貯金が尽きても、マンションを売れば何とかなると自分に言い聞かせているそうです。