「正解はない」からこそ、親子双方が納得できる選択を一緒につくる

「母を一人にしておくわけにはいかなかった。でも、母から『自分らしく生きる場所』を奪ってしまったのかもしれない……」

山村さんの後悔に、明確な正解はありません。もし田舎に一人残していたら、事故や孤独死への不安を抱え続けていたかもしれないですし、遠距離介護は現実的に厳しかったかもしれません。

同居は「世話をすること」がゴールではありません。親が最期まで「自分の人生を、自分で選びながら生きている」と感じられる環境を整えることが大切なのではないでしょうか。

後悔を完全になくすことはできません。それでも、小さくすることはできます。そのために大切なのは、親が元気なうちに「お金・住まい・つながり」をどうしたいか、本音で話し合うことです。

「迷惑をかけたくない」という親の言葉の裏にある、「最後まで自立していたい」「自分で決めて生きたい」という思いを汲み取り、その上で、その時点で双方が納得できる選択をするしかありません。

親を呼び寄せるとき、子は「安全」や「管理のしやすさ」を優先しがちです。しかし、親が本当に求めているのは、安全な住まい以上に「自分の意思で生きている」という実感なのかもしれません。

正解がないからこそ、「あとから後悔しない選択」ではなく、その時点で、親子双方が納得できる選択を一緒につくっていくこと。それが、いちばんの親孝行になるのではないでしょうか。

伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)