繰下げ受給と遺族年金の不満…国が解決に動き出した

年金の繰下げ受給と遺族厚生年金をめぐっては、以前から「実際には支給されないにもかかわらず、遺族年金の受給権があるという理由だけで、なぜ自分の年金を繰り下げて増やすことができないのか」という疑問の声が多く上がっていました。

この問題を解決するため、令和7年の法改正で令和10年3月31日時点において、遺族厚生年金を受け取る権利を有しており、かつ65歳に到達していない人(昭和38年4月2日以降生まれ)は、以下のようになります。

■老齢厚生年金……遺族厚生年金を「請求していない」場合に限り、繰下げ受給が可能

■老齢基礎年金……遺族厚生年金の「受給権の有無に関係なく」繰下げ受給が可能

これは喜ばしい改正ですが、変更後も注意すべき点があります。

たとえば、遺族年金は全額非課税であるのに対し、老齢年金は雑所得として税金がかかるので、同じ年金額であれば遺族年金としてもらうほうがお得です。

また、繰下げによって年金が増えても、税金や社会保険料の負担額も増えるため「期待したほど手元にお金が残らない」という事態が考えられます。

そのため、年金額は「手取りベースではどうなるのか?」という視点での検討が欠かせません。

ミツコさんの後悔

誰しも年金で「損したくない」という気持ちがあるのは当然です。ただし、「年金額の最大化」を目指すことが、自分や家族にとって必ずしも「最善」だとは限りません。

現在70歳のミツコさんはしみじみと語ります。

「もう一度やり直せるなら、たとえ月14万円でも65歳から年金を受け取るわ。節約やパートなんかしないで、夫が元気なうちにのんびり旅行でもすればよかった……」

その言葉には、思い描いていた年金額をもらえなかったことよりも、将来の数字を優先した結果、時間や生活を切り詰めて、夫との最後の数年間をおろそかにしてしまったという後悔が込められていました。

「長生きするほど得」と言われる年金の繰下げ受給ですが、いつ終わるか分からないのが人生です。

だからこそ、年金の受取時期を検討する際は、単なる損得勘定だけではなく「自分の人生の優先順位」を考えてみることが大切なのではないでしょうか。

山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー