「子どもに迷惑をかけたくない」。そんな思いから、地方にある先祖代々の墓を畳む「墓じまい」を決断するシニア世代が増えています。しかし、良かれと思ったその決断が、親族間の断絶や予期せぬトラブルを招くケースが後を絶ちません。ある男性のケースを見ていきます。
墓じまいなんて、するんじゃなかった…納骨の日に親族が絶句。「年金月17万円・68歳男性」が良かれと決めた「納骨堂」選びに潜む盲点。遺骨が路頭に迷う危機 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どもを思い下した決断が招いた、親族との「絶縁」と「絶望」

「良かれと思ってやったことが、まさか親族とこんなに揉めるなんて……。ご先祖様を路頭に迷わせてしまい、ただ申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 

月17万円の年金で暮らす佐藤健一さん(68歳・仮名)は、そう肩を落とします。トラブルの発端は、3年前のことでした。

 

地元の山中にある墓を守るため、年に数回、新幹線とバスを乗り継ぎ往復6時間かけて通っていましたが、65歳で仕事を辞めてからは、自身の足腰に不安を感じるようになります。「いつまで墓参りができるだろうか」と、将来を案じる日々が続いていたといいます。

 

「自分が動けなくなった後、息子たちにこの負担を押し付けるわけにはいかない」

 

その一心で、150万円ほどの貯金を切り崩し、墓じまいに踏み切りました。佐藤さんが新たな納骨先に選んだのは、最寄り駅から徒歩圏内にある、最新式の「自動搬送式納骨堂」でした。

 

カードをかざせば、重厚な墓石が自動で運ばれてくるシステムに、佐藤さんは「これなら息子も仕事帰りに立ち寄れる」と満足していたといいます。

 

しかし、その効率性が親族の逆鱗に触れました。納骨式の日、招いた叔父が、無機質な参拝スペースを見るなり激高したのです。

 

「こんなコインロッカーのような場所に先祖を閉じ込めるのか! あんたは先祖を何だと思っているんだ!」

 

叔父の言葉に、周囲の親戚も同調しました。「相談もなしに勝手なことを」と罵倒され、以来、佐藤さんは親族から一切の連絡を絶たれたといいます。

 

さらに追い打ちをかけたのが、最近耳にしたニュースでした。佐藤さんが契約した納骨堂の運営主体である宗教法人が、多額の債務を抱え経営不振に陥っているというのです。

 

「もし施設が閉鎖されたら、預けている遺骨はどうなってしまうのか」。そんな不安が佐藤さんを襲います。

 

「安心だと思っていた場所が、実は経営不振だなんて。一度墓を壊してしまったら、もう元には戻せません。こんなことなら、墓じまいなんて、するんじゃなかった……」