夫婦の「その後」

晴喜さんは当初、「ふざけるな、離婚なんてするわけないだろ! それにお前、どうやって食べていくつもりなんだ」と、離婚を拒否していました。

実は香澄さん、もともと専業主婦でしたが、離婚の決意を固めた直後から歯科医院で受付のパートを始めていました。さらにその傍ら、通信教育で医療事務の勉強に励み、市立病院の会計事務に就職が決まっていたのです。

月収は手取り21万円ほどの予定で、住まいは家賃8万円の1DKのマンション、なんとか一人で生活していけるめどがたっています。

そんな背景もあり、「離婚」を口にして決意を固めた香澄さんは、その日から晴喜さんのための家事を一切しなくなりました。

夫が離婚を受け入れた理由

冷戦状態が数週間続いたある日、香澄さんが仕事から帰ると、晴喜さんから「離婚してもいい」と告げられました。突然の展開に香澄さんが理由を聞くと、

「同じ家に居るのにひと言も話さない今の状況がツラい」

「いまの会社で再雇用もあるし、たとえ財産を半分とられたとしても、ひとりで生きていくだけの金はある」

とのこと。

香澄さんは、最後まで自分本位な夫の言葉に嫌悪感を抱いたものの、離婚できそうなことに心から安堵したといいます。また、将来への不安はあるものの、夫からの心無い言葉や無言の圧力から逃れられることによる精神的な解放感のほうが勝ったそうです。

とはいえ、財産分与などの話し合いはこれから。交渉が冷静にできないようであれば、専門家へ相談しようと考えているとのことでした。

長年連れ添った夫婦は特に、相手がなにも言わないからといって安心してはいけません。その沈黙は「満足ではなく、あきらめ」かもしれないのです。

山﨑裕佳子
FP事務所MIRAI
代表