富裕層向け投資家ビザに特化して100億円以上の申請業務に携わる中で、20年、2万人以上の成功者の歩みを詳細に知る機会を得た著者の大森健史氏は、そこから見えた「シン富裕層(※)」の共通点を、閉塞感を抱く日本人、とりわけ若者に伝えるべく、本書の発刊に至った。本記事では、大森健史氏の著書『進化するシン富裕層』(日刊現代)より一部を抜粋・再編集して、「シン富裕層」の多くに好んで選ばれる「タワマン」の実態について解説します。(※親が裕福だったわけではなく元々は「ごく普通の人」でありながら、インターネットやスマートフォンの普及を背景とした起業、暗号資産、動画配信、情報ビジネスなどを通じて、わずか数年で一代にして巨万の富を築いた新しいタイプの富裕層)
「日経平均10万円なら港区タワマンは10億円に」ある富裕層が語る持論。なぜ一部のエリートは“世間の悪評”をスルーして「自宅投資」に走るのか

『金持ち父さん貧乏父さん』の手法は日本には不向き

 

日本でタワーマンションがあまり好まれない背景には、「ロバート・キヨサキ」人気も関係しているのではないか、と思います。不動産好きのシン富裕層からも、「そこそこお金を持っている人たちの中にも、ロバート・キヨサキ氏の書籍を読んで実践している人たちが数多くいるから、これほど有利なタワマンや都心部の新築マンションに対して購入希望者がまだ殺到していないんだ」という話を聞きます。

 

ロバート・キヨサキ氏は、1997年刊行(日本版は2000年に筑摩書房から)の『金持ち父さん貧乏父さん』(シャロン・レクターとの共著)が世界的ベストセラーになった、ハワイ出身の実業家で投資家です。彼は、自宅を買うという行為は資産を購入するのではなく、負債(コスト)を購入するという行為であるからできる限り賃貸に居住すべきだ。投資はキャッシュフローを生むアパートなどを1棟丸ごと買って人に貸し出し、家賃収入を得てこそ資産になるんだ、と主張しています。

 

しかし、この書籍についての面白い話を前述のシン富裕層から聞いたことをお話しします。私自身もこの書籍を購入し、キャッシュフロー・クワドラント(お金の稼ぎ方によって人々を4つのカテゴリーに分類する)等の考え方は参考になると考えているのですべてが駄目だと感じているわけではありません。

 

ただ、税制や金利の低さなど、日本の経済環境とアメリカのそれとでは状況が大きく異なります。その点を無視して、キャッシュフローを生むからアパート投資が良く、キャッシュフローを生まないから自宅購入は悪いという考えには強い違和感があると、そのシン富裕層の方は言っていました。

 

成功した多くのシン富裕層からお話を聞いた立場からしても、ロバート・キヨサキ氏の主張は、ワンルームマンションや狭小アパート投資などで回り道をして、せっかくの資産形成チャンスを逃すことにつながるような気がします。シン富裕層が実践しているマンション投資なら、自宅としてタワマンや好立地マンションに住みながら、自然と資産が形成されていくことを体験できます。タイミングを見ながら売り買いを繰り返すことで、ほとんど苦労することなく資産が形成されるのです。

 

ところで、ベストセラーになった書籍『金持ち父さん貧乏父さん』の評価ですが、そもそもこの本は前年度に発売された「キャッシュフロー101」というボードゲームの販売促進のために書かれた本なので(ゲーム発売の後に本が出版されている)、キャッシュフローに振り切った内容になっているのではないか?と、そのシン富裕層の方は言っていました。内容を鵜呑みにしてはいけないのです。

 

「キャッシュフロー101」というボードゲームはキャッシュフローの重要性を学ぶためのゲームと割り切ればいいのですが、ボードゲーム愛好家の間では評判がよくないらしく、多くのボードゲーム会(ボードゲーム愛好家が集まって楽しむイベント)で〝持ち込み禁止〟になっていると聞いたことがあります。理由は、ゲームの目標が「不労所得を目指す」ことになっているので、参加者がゲーム会をきっかけにネットワークビジネスに勧誘されたり、投資詐欺に遭う可能性が指摘されているからです。

 

シン富裕層の間では、ロバート・キヨサキ氏自身はコツコツとアパート投資で成功したのではなく、実は著書とゲームがバカ売れしたから大成功したとさえ言われています。もちろん、ビジネスマンとしては何で儲けようが、それはそれで素晴らしいことだと思います。しかし、多くの人が本の内容を鵜呑みにして資産形成を遅らせているということを考えると、少し罪作りな本とも言えるでしょう。

 

 

大森 健史

株式会社アエルワールド

代表取締役