「今年も同じ年収のはず」が招いた誤算
都内在住Aさんは、大手企業に勤める40代の会社員。妻はパート勤務で、小学生と幼稚園に通う子どもがいます。
Aさんの年収はここ数年好調で、昨年は1,000万円を超えていました。「今年も同水準だろう」と見込み、冬のボーナス時期にふるさと納税を計画。
ふるさと納税のかんたんシミュレーションに、「年収1,000万円」「配偶者あり」と入力すると、「上限目安は約17万6,000円」と表示されました。
シミュレーションをもとに、Aさんは「今年は17万円まで攻めよう」と、上限ギリギリの17万円分を寄付。確定申告の手間を省くため、寄付を5つの自治体に抑えて、「ワンストップ特例申請書」を提出し、手続きは完了。
「これで来年の税金対策はバッチリ」と満足して年を越しました。
翌年6月、通知書で気づいた「想定外」
翌年6月、会社から届いた「住民税決定通知書」に目を通したAさんは、思わず首をかしげました。
「17万円寄付したんだから、税金は16万8,000円くらい安くなっているはずだよな……」
ところが、通知書に記載された税額控除の合計は、約13万円。
「計算が合わない。おかしいな……」その差額は約3万8,000円。書類を見返しても、ワンストップの手続きをミスしたわけではありませんでした。
「手続きは間違っていないのに、一体なにが起きたんだ……?」
3つの「ズレ」が重なり、上限額を押し下げていた
なぜ、シミュレーションでは「17万6,000円」と表示された上限が、実際には「13万円台」まで下がってしまったのでしょうか。
原因を分解してみると、Aさんの家庭ならではの事情と、多くの人が陥りがちな「見込み違い」が浮かび上がってきました。
1. 障害者控除の適用(入力漏れ)
Aさんの2人の子どもは発達の遅れがあり、昨年、精神障害者健康福祉手帳(障害者手帳)を取得していました。手帳があると、税制上の「障害者控除」が適用されます。
Aさんの子どもの場合は「一般の障害者」に該当し、住民税の計算上、1人あたり26万円の所得控除がつきます。2人分で52万円。これだけ課税される所得が減ります。
年末調整の障害者控除の欄には記入したものの、ふるさと納税のシミュレーションの際はそのことがすっぽり抜けていたのです。
2. iDeCoの開始(入力漏れ)
さらにAさんは、老後資金のためにiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めていました。
勤務先に企業型確定拠出年金がなかったため、Aさんの拠出限度額は月2万3,000円。満額を掛けていたので、年額27万6,000円が全額所得控除になります。
こちらも簡易型のシミュレーションで入力が漏れていました。
3. 年収の「見込み違い」
ここが最大の盲点です。
Aさんは「今年も1,000万円を超える」と見込んでいました。しかし、働き方改革の影響を受けたことで例年に比べて残業が減り、実際の年収は960万円で着地していました。
「40万円くらいの差なら誤差では?」と思いがちですが、ふるさと納税の計算においては致命傷になります。