Aさんが生活保護の提案を拒否したワケ

Bさんの提案に対して、Aさんは当初拒んだそうです。

「生活保護って……税金で生活させてもらうのは気が引けます」

しかし、Bさんは「こういうときに助けてもらうための税金なんですから。まずは申請して、1日でも早く社会復帰しましょう」と粘り強く説得。その結果、最寄りの福祉事務所で生活保護の申請したのでした。

生活保護の被保護率

厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和7年9月分概数)」によると、生活保護を受けている被保護実人員は1,985,349人、被保護世帯数は1,645,714世帯です。そのうち高齢者の単身世帯は841,469人と構成比の51.4%を占めています。

生活保護制度とは

生活保護とは、世帯収入が厚生労働大臣の定める基準で計算される「最低生活費」を下回り、自分の資産や能力、社会保障制度をすべて活用しても、なお生活が困窮していると認められた場合に、最低生活費から年金や就労収入等などを差し引いた差額を、毎月保護費として支給される制度です。

保護費には地域や世帯の状況により、生活や住宅、教育、介護、医療、出産、生業、葬祭の8種類の扶助があります。

Aさんの場合、「生活扶助」として食費や光熱水費(冬季暖房費加算を含む)や、「住居扶助」として定められた基準額内のアパート家賃の実費支給、「医療扶助」として医療サービスの費用が直接医療機関へ支払われる(本人負担なし)など、扶助がされるでしょう。

なお、生活保護の受給中は、収入の状況を毎月申告しなければなりません。福祉事務所のケースワーカーが自宅を訪問調査し、就労の可能性があれば、就労に向けた助言や指導も行われます。

Aさんの巧みの技が復活

Aさんは、現在では貴重な巧みの技を持った指物職人です。ケースワーカーから、体調が回復したら地域のシルバー人材センターに登録することを勧められました。

その後、人材センターに登録してみたところ、徐々に仕事が舞い込むようになりました。Aさんは、今後収入を増やして生活保護から抜け出すつもりです。目標ができて生活に張り合いが出てきたと喜んでいたそうです。Bさんも、Aさんの明るい変化を知ってひと安心だったと話してくれました。