文部科学省「学校基本調査」によると、2000年代前半の大卒の就職率はおよそ50%でした。この、いわゆる就職氷河期世代は、やむを得ず非正規雇用を選択したり、正社員として就職できても企業の都合で給与を低く抑えられたりしたことで、将来に強い不安を抱いている人も少なくありません。ただ、そんななかでも「老後のことはまったく心配していない」と楽観的な人もいるようです。その理由とはいったいなんなのか、年収450万円の50歳会社員の事例をみていきましょう。
最後に笑うのは俺なんだよ…年収450万円の50歳独身サラリーマン、酔った勢いで同僚に漏らした〈驚きの老後計画〉→まさかの“緊急事態”に涙目【CFPが警告】
達彦さんが明かした“余裕”の真相
「俺はさ、自分が頑張らなくてもいいんだよ。だって、親の遺産があるから……」
達彦さんの両親はともに79歳で、達彦さんはひとりっ子。そして独身です。これまで一人暮らしの経験はなく、いまも実家で両親と暮らしています。
聞けば、父は大手企業の重役まで勤め上げた人。退職金も年金も多い。にもかかわらず現役時代から倹約家であったため多額の資産を有しており、その額は少なく見積もっても1億円はあるだろうというのです。
「だから俺は仕事をいつ辞めてもいいんだけどね。仕事を辞めると親父が世間体を気にしてうるさいから。それに、遺産を狙っているのがバレバレだと気まずいだろ?」
まさかの事実を知った同僚2人は、言葉に詰まります。
「まあ、そういうわけなんだ。みんな俺を馬鹿にしているようだけど、最後に笑うのは俺なんだよ」
達彦さんの“完璧なプラン”が崩壊
達彦さんは現在、食費、居住費として毎月5万円を家に入れています。残りの給料は趣味の車と競馬、パチンコにほぼ全額を使い切っているようです。
給料は多くないものの、独身で実家暮らしのためなんら問題ないと考えています。両親の遺産をあてにして悠々自適な生活を送っていた達彦さんですが、実は、両親は水面下である計画を進めていたのです。
ある日、達彦さんは両親から話があると言われ、リビングに呼ばれました。
「父さんと、母さんは老人ホームに入ることにしたよ」
寝耳に水の達彦さんは言葉を失います。
「前々から考えていたんだ。この家を売って、海の見える街でのんびり暮らそうって。ひとり息子のお前に迷惑をかけたくないからな……」
見せられた老人ホームのパンフレットから、温泉付き、ジム付きの豪華な施設を有するホームであることがうかがえます。寝耳に水とはまさしくこのこと。あの倹約家の父が、まさかそんな大胆な行動にでるとは夢にも思っていませんでした。
「えっ、俺の家は……遺産はどうなるんだ?」
それから約9ヵ月後、両親は本当に自宅を売却し、念願の老人ホームに移り住みました。高級老人ホームとあって居心地は最高、毎日楽しく暮らしています。ただ、月額利用料は高額で、二人の年金だけでは足りないため、不足分は資産を取り崩しています。
「ちょっと待ってくれ……俺の老後はどうなるんだ」
親の幸せそうな報告を聞きながら、達彦さんは頭を抱えています。