独居暮らし・78歳父の元へ「サプライズ帰省」をした娘だったが…

これは昨年のこと。年の瀬も押し詰まった12月28日、埼玉県在住の青木妙子さん(47歳)は仕事納めの勤務先から、茨城県に住む父・平林幸夫さん(78歳)の元へ向かいました。普段は事前に連絡してから帰省するのですが、この日は急に思い立ち、サプライズで顔を見せようと考えたのです。

幸夫さんは前年に妻の節子さんを亡くし、それ以降は一人暮らし。妙子さんは月に一度は電話で様子を聞いていましたが、幸夫さんからの返事はいつも決まって「大丈夫だ、心配するな。一人でやれているから」というものでした。

妙子さんはフルタイムの仕事を持つため忙しく、父の様子を直接見ることがなかなかできません。また、大学生の息子がいて、教育費のために家計もカツカツです。また、妙子さんには弟がいますが、関西に住んでいてほとんど実家に顔を出さず、父の様子を確認できるのは自分だけという状況でした。

「ただいま~妙子です。帰ったよ!」

そう笑顔で玄関のドアを開けた瞬間、家の中が冷え切っていることに驚きました。12月下旬だというのに、リビングの石油ファンヒーターが動いていません。見ると、灯油のタンクは空っぽです。「おお、帰ってきたのか……」そう返事をした幸夫さんは、厚着をしてこたつに潜り込んでいました。

「お父さん、どうして暖房つけてないの?」

驚いて声をかけると、幸夫さんは「灯油を買いに行くのが面倒でな」とだけ答えます。しかし、台所を見た妙子さんはさらに言葉を失いました。

「大丈夫だ、心配するな」と言い続けた父が隠していた“真実”

冷蔵庫の中はほぼ空に近く、流しには洗われていない食器が積み重なり、浴室を覗くと明らかに何日も使われていない様子でした。

しかも、幸夫さんは以前より明らかに痩せています。頬はこけ、服もだぶついて見えました。

「お父さん、ちゃんとご飯食べてる? お風呂は入ってるの?」

妙子さんが問い詰めると、幸夫さんは重い口を開きました。

節子さんが存命だったころは二人分の年金が月18万円ほどあり、節子さんが家計を管理していたので問題なく暮らせていました。しかし、節子さんが亡くなってからは幸夫さんの年金約10万円だけと、収入が激減。しかも家計管理も家事も妻に任せきりだったため、一人ではまともに生活を回せなくなっていたのです。

「料理なんてしたことがない。灯油も母さんが生きていたころは配達を頼んでいたが、どこに連絡すればいいかわからなくて」

母が亡くなってからの父の暮らしぶりは気にはなっていましたが、まさかここまでとは夢にも思わなかった妙子さん。「どうしてもっと早く言ってくれなかったの」との問いに、幸夫さんは「お前にも生活があるじゃないか。俺のことで迷惑をかけたくなかったんだ」と答えるのでした。