55歳で役職定年を迎え、部長職を退いた斉藤昌也さん(仮名)。年収が300万円も減り、月々の手取りも約15万円減少しました。しかし、その事実を知らなかった妻は、銀行口座の振込額を見て顔面蒼白。さらに、長年家計を一人で管理してきた妻が抱える"ある秘密"も明らかに……。今回は、役職定年と“家計丸投げ”が生む落とし穴と、55〜65歳の10年間で家計のピンチはリカバリーできるのかを、ファイナンシャルプランナーの三原由紀氏が解説します。
あなた、今月のお給料おかしいわ…通帳を手に顔面蒼白の妻。部長職を外れ〈年収300万円減〉の55歳夫を窮地に追いやる「とんでもない秘密」【FPの助言】
「まさか年金まで…」追い討ちをかけた"第二の衝撃"と、夫婦で決めた覚悟
役職定年から3ヵ月後、恵さんがファイナンシャルプランナー(以後、FP)に相談して作成してもらった「年金試算表」を見て、再び顔色を失いました。
「あなた…役職定年の影響、年金にも出るのね……」
役職定年による収入減は、将来受け取る年金額にも影響を及ぼします。厚生年金の報酬比例部分は現役時代の給与に応じて計算されるため、55歳以降の給与が下がれば、その分年金額も減る可能性があります。
斉藤さんの場合、65歳以降の年金は年間で約8万円、月にして約7,000円下がると試算されていました。
「今の生活も苦しいのに、老後もずっとこのままなの……?」
恵さんが沈む中、FPはこう助言しました。「60歳以降も厚生年金に加入できる働き方を選べば、年金額を積み増せます」。
帰り道、夫婦は静かに話し合いました。「今のままでは老後が不安だ。働き方を工夫しないと」。そんなやり取りを経て、斉藤さんは60歳以降も厚生年金に加入できる働き方を模索する決意を固めました。
役職定年は、単なる収入減ではなく「老後のお金の設計」を抜本的に見直す転換点でもあったのです。
月3万円の節約に成功、さらに妻も厚生年金加入へ…斉藤さん夫妻が始めた「家計立て直し作戦」
役職定年から半年後、斉藤さん夫妻の生活には確かな変化が生まれました。
家計簿アプリを導入して支出を“見える化”した結果、重複していた保険や不要な特約が明らかになり、通信費の見直しと合わせて月3万円の節約に成功。以前は家計の話を避けがちだった斉藤さんも、今では毎月アプリを恵さんと一緒に確認するようになりました。お金の話を共有できるようになったことで、夫婦の安心感も大きく変わったといいます。
さらに、恵さんは週3日・1日5時間のパート(月収約8万円)を、週4日・1日6時間に増やし月収は約11万円に。この働き方なら厚生年金にも加入できます。
「年収が下がったことは事実だけど、二人で向き合えば道は開ける」と斉藤さん。
夫婦は話し合い、「毎月5万円を貯蓄する」という目標を掲げました。節約で生まれた3万円と恵さんの収入増からの2万円を積み立てれば、10年で600万円が手元に残ります。