Aさんを襲った想定外…年金事務所で知った「まさかの事実」

初の年金支給日から数日後のこと。夫の体調が急変。すぐに病院に運ばれましたが、還らぬ人となってしまいました。

あまりに突然のできごとに呆然自失のAさんでしたが、子どもたちの協力もあり、なんとか夫の死亡に係る手続きを進めます。そして悲しみ癒えぬまま、「遺族厚生年金」を受け取るため年金事務所へ。

そこで、想定外の事実を告げられたのでした。

年金額が調整…遺族年金は「差額分」のみの支給に

年金事務所職員「Aさんは65歳以上ですので、遺族厚生年金とご自身の年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)を同時に受け取ることができます。ただし、遺族厚生年金はそのまま支給されるわけではなく、ご自身の老齢厚生年金に相当する額を差し引いた差額分が支給される仕組みです」

遺族厚生年金も、今後の収入として見込めると知ったAさん。しかし、ここで疑問が生じます。

Aさん「差し引く……? どういうことですか?」

職員「差し引く前の遺族厚生年金は、寡婦加算を含めて年間120万円です。しかし、Aさんの老齢厚生年金は71万円あるため、その分を差し引いた49万円が実際の遺族厚生年金となります。つまり、老齢基礎年金111万円、老齢厚生年金71万円、遺族厚生年金49万円を合わせて、Aさんの受給額は年間231万円です」

「繰下げ受給」の盲点

Aさんはここで、知りたくなかった事実に気がつき思わず声が上ずります。

「ちょっと待ってください……これ、年金繰下げを選ばないほうが得だったってことですか!?」

Aさんがもしも年金を繰り下げていなければ、受け取れる老齢厚生年金額は50万円でした。この場合、遺族厚生年金が発生すると、支給額は120万円から50万円を差し引いた70万円となり、老齢厚生年金と遺族厚生年金の合計は120万円となります。

しかし、年金を繰り下げたAさんは、待機期間である65歳から70歳までの5年間、老齢厚生年金を受け取っていないにもかかわらず、繰下げによって増えた老齢厚生年金(71万円)と遺族厚生年金(49万円)の合計が120万円となり、結果的に繰下げをしなかった場合と同額になったというわけです。