55歳のとき、「とにかく別れたい」と家を出た和代さん(65歳)。当時大学生だった娘の教育費は元夫が負担し、和代さんは専業主婦からの再就職に苦労してきました。離婚時にもらえたのは年金分割のみで、貯蓄は離婚前に父から相続した300万円だけ。頼るつもりだった実家も当てが外れました。65歳となった今、訪問介護ヘルパーとして働き続ける和代さんが抱える"後悔の正体"とは――。ファイナンシャルプランナーの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
私、我慢したほうがよかったのでしょうか…〈介護ヘルパー時給1,300円〉と〈年金月9万5,000円〉で綱渡りの生活。夫の元を飛び出して10年、65歳女性が"自問自答し続ける”ワケ
後悔しないために――離婚前に"必ず確認すべき3点"
もし今、離婚を考えている読者の方がいるなら、FPとして必ず確認してほしいことがあります。
①離婚後の「収支シミュレーション」を作る
・何歳まで働けるか
・住まいにかかるお金はいくらか
・年金はいくら受け取れるか(ねんきん定期便で確認)
・ どの時期に赤字になるか
これを可視化しない限り、離婚後の生活は不安定なままとなります。自治体の無料相談や年金事務所も活用しましょう。
②財産分与・退職金・年金分割を"漏れなく"確認する
専業主婦だった女性にとって、財産分与は老後の生命線です。勢いで家を出ると、本来受け取れるはずの財産を失いかねません。弁護士への相談も検討しましょう。
③実家を"あてにしない"
親の介護・相続事情は一瞬で変わり、実家が「戻れない場所」になることもあります。他人の資産を老後の支えにするのは危険です。
55歳で「自由になりたい」と家を飛び出した和代さん。しかし10年後の今、訪問介護の現場で働きながら、ギリギリの生活と将来への不安に向き合っています。 離婚自体が悪いわけではありません。ただ、準備をせず、感情だけで決断する離婚は、老後の生活に深い影を落とします。
もし迷っているなら、どうか一度立ち止まってください。そして、自分の人生と老後を守るために、冷静で慎重な選択をしていただければと思います。
三原 由紀
プレ定年専門FP®