55歳のとき、「とにかく別れたい」と家を出た和代さん(65歳)。当時大学生だった娘の教育費は元夫が負担し、和代さんは専業主婦からの再就職に苦労してきました。離婚時にもらえたのは年金分割のみで、貯蓄は離婚前に父から相続した300万円だけ。頼るつもりだった実家も当てが外れました。65歳となった今、訪問介護ヘルパーとして働き続ける和代さんが抱える"後悔の正体"とは――。ファイナンシャルプランナーの三原由紀氏が解説します。
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私、我慢したほうがよかったのでしょうか…〈介護ヘルパー時給1,300円〉と〈年金月9万5,000円〉で綱渡りの生活。夫の元を飛び出して10年、65歳女性が"自問自答し続ける”ワケ
離婚→専業主婦→老後困窮..."同じ道"を歩む女性は少なくない
和代さんのように、50代で離婚してから生活が厳しくなる女性は少なくありません。背景には、「就労の壁」があります。
50代になると正社員としての再就職は簡単ではなく、パートやアルバイトなど非正規で働く人が多くなります。当時は非正規の場合、勤務時間や条件によっては厚生年金に加入できない働き方になりやすく、将来の年金額も伸びにくいという課題がありました。
ひとり親世帯に関する調査では、母の就労収入は平均で年236万円程度とされており、離婚後に安定した生活基盤を築くことは決して容易ではありません。
「年金分割しか受け取れなかった」「預金は夫名義が多かった」「感情的に離婚を急ぎ、財産分与の話し合いができなかった」——こうしたケースも珍しくなく、離婚時の判断が老後の生活に直結します。
さらに、「実家に戻ればなんとかなる」という考えにも注意が必要です。親の介護や相続事情によって、戻れないことはよくあります。
精神的には離婚が救いとなることもありますが、経済的な基盤が弱いまま熟年期に入ると、老後の選択肢は大きく狭まるという現実があります。