吉田さん夫婦と娘・美沙さんはどうしたらよいのか?

今回のケースは、夫からの経済的DV(ドメスティックバイオレンス) にあたります。殴る蹴るといった暴力ではなく、家族の名義を利用し、借金や金銭的負担を相手に負わせることから「DV」という言葉が使われています。

家族カードを勝手に使われるケースのほか、配偶者を連帯保証人にして借金を作り、返済を丸ごと押しつけるケースも実際にあり、男女逆のパターンも珍しくはありません。

では、今回のようなケースにおいて、どんな対処方法があるかを考えてみましょう。

まず第一に検討すべきは美沙さん自身の自己破産です。もしこの金額が100〜200万円程度の少額だった場合は、吉田さん夫婦が無理のない範囲で援助したり、銀行のおまとめローンなどで借り換えて金利を圧縮したりして、計画的に返済していく方が将来の信用情報への影響は小さく済みます。

しかし、1,000万円となると吉田さん夫婦の今後の生活にも大きな影響を与える金額です。あまり積極的に検討したい選択肢ではありませんし、浪費癖があるのをわかってクレジットカードを夫に渡していたことは自己責任なのですが、今後の生活設計を考えると検討に値します。

自己破産をするデメリットには、借入れができなくなることやクレジットカードを作れなくなることがあります。しかし、両親の名義での家族カードを持つことは可能です。

また、美沙さん自身も働き収入があるため、借金さえ消えれば自立して生活することができます。吉田さん夫婦と同居すれば生活費が大幅に圧縮できる見込みで、教育資金の準備も可能。不足分があっても、奨学金の活用を検討することで十分対策もできます。

吉田さん夫婦にとって、娘・孫との同居は老後の生活費の相互負担というプラス面もあります。今後の自分たちの老後資金と孫たちの教育資金の準備を含め、今と将来の家計の見える化をして、必要な資金をどう準備するか計画を立てることで不安を解消することもできます。

老後破綻は「自分たちが原因」とは限らない

老後の破綻は自分たちが無計画なだけで起きるとは限りません。今回のように、家族のトラブルが老後資金に直接ダメージを与えるケースは珍しくはありません。

まず重要なことは、現状を冷静に分析し、今何ができるかを考え、自分たちにとって最良の道を選ぶための戦略を冷静に考えることです。追い詰められた状況では冷静に情報を集め判断することが難しいかもしれません。

そんな時には、家計再生に強いファイナンシャルプランナーや弁護士などプロの力を借りて、ベストな戦略を考えるのも一つの方法です。

債務整理や自己破産の選択、ローン借り換え、家計管理の徹底など、あらゆる情報を集めて戦略を立て、自分たちにとって最良の道を選びましょう。

小川 洋平
FP相談ねっと