退職金が入り、住宅ローンも完済し、長年の仕事からも解放。「やっと夫婦で好きなように生きられる」──とりわけ、現役時代にがむしゃらに働いてきた人ほど、その解放感は深く感じられます。しかし、老後は外からではなく“家族の内側”から崩れることがあります。今回ご紹介する吉田さん夫婦は、資産も年金も十分にあり、豪華な海外旅行を楽しみ、笑顔で帰国。しかし、その矢先に二人を待っていたのは、思わぬ事態でした。ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
ファーストクラスの贅沢旅行から帰国。〈資産4,000万円〉〈年金月25万円〉幸福感いっぱいの60代夫婦が急転直下…自宅前・車で待ち構えていた「破綻の影」【CFPが解説】
玄関で待っていた「破綻の影」
吉田さん夫婦がタクシーで帰宅すると、玄関前に見覚えのある車が停まっていました。車から降りてきたのは美沙さんと小学生の孫二人。しかし、娘の表情はどこか暗く、どこか怯えているように見えました。
家の中に入り、荷物を下ろすやいなや、美沙さんはぽつりと語り出しました。
夫の浪費癖に長年悩まされてきたこと。夫は消費者金融やカードローンで借金を増やし、美沙さんの預金で穴埋めを続けてきたこと。そして、ついに自己破産した夫は、今度こそやり直してくれるかと思ったが、美沙さん名義で家族カードを作らせ、そのカードで浪費を繰り返していたこと。
借金は雪だるまのように膨れ上がり、リボ払いで延命し続け、最終的な残高は1,000万円を超えたといいます。美沙さんは夫とやり直すことを諦め、離婚を考えているといいます。
夫は自己破産後も浪費癖が治らず、養育費の支払いは期待できません。美沙さんは多額の借金を抱え、これから子ども(吉田さん夫婦にとっては孫)の教育費も必要になります。
「そんなことになっていたなんて、まったく気づかなかった……」
驚愕した吉田さん。親を不安にさせまいと、美沙さんはそれまで必死に隠してきたのだといいます。
しかし、こうなった今、美沙さんの借金を肩代わりしてあげるべきか、そして孫の教育費や生活資金をどうしたらいいのか。娘と孫を面倒を見ることになったら、今後、自分たちの老後はどうなるのだろうか……。
吉田さん夫婦の理想的にも思える老後は急転直下、先行きの見えない不安に包まれることになったのでした。