核家族化が一般的となった昨今、離れて暮らす親とは会えていますか? 電話などでは定期的に連絡をとっていても、直接となると、お盆や年末年始、GWなど、年に数回という人も多いのではないでしょうか。なかには、電話やSNS上での親の「大丈夫」に甘えた結果、後になって後悔……というケースもあるようです。そこで今回、母親の言動を不審に思いコッソリ帰省した43歳女性の事例をもとに、離れて暮らす親子に潜む思わぬリスクと、その回避策をみていきましょう。
来るなら言ってよ…ビデオ通話で「画面オフ」にする71歳母、心配した娘が実家に“アポなし”帰省→照れ笑いで出迎えてくれた母の後ろに広がる〈信じがたい光景〉
恵美さんが目にした〈信じがたい光景〉
母の後ろには、何段にも積まれた段ボール箱が、玄関からリビングまでの通路をふさいでおり、まるで倉庫のようになっていたのです。
「ちょっと待って、どうしたのそれ。後ろの箱!」
青ざめながら箱の中身を確認すると、健康器具や調理器具など、通販番組でよく見る商品の数々でした。さらに、リビングには未開封の高級化粧品やサプリメントが、足の踏み場もないほど無造作に置かれています。
「なんかおかしいと思ったら……こんなに買い込んでどうするつもり!?」
「安いと思ってつい……。気づいたらこんな量になってて」
思わず強い口調で問い詰める恵美さんに対し、初枝さんは目を泳がせ、オドオドと答えるばかりです。嫌な予感がした恵美さんは、今度は2階がどうなっているのか不安に駆られ、階段を駆け上がりました。
まるで時間が止まったような空間…娘が悟った母の「本音」
部屋に入り、恵美さんは息を呑みました。そこはもともと父が使っていた部屋でしたが、まるでいまも父が生きているかのように、レイアウトはそのまま。さらに、棚の上には父の写真や父が愛用していた眼鏡、万年筆など思い出の品々が丁寧に並べられ、まるで時間が止まったかのようです。
(電話のときは気丈に振る舞っていたけど、ずっと寂しかったんだな……)
恵美さんは瞬時に悟りました。
「お母さん、気づいてあげられなくてごめん」
買い物で気を紛らわそうとしていた母の心境を思うと胸が締めつけられ、恵美さんは思わず涙をこぼしました。
叱るのは逆効果…親の変化に気づいた家族ができること
高齢者が配偶者との死別などをきっかけに、「衝動買い」や「買い込み」に走ってしまうケースは決して珍しくありません。その背景には、孤独や喪失感といった心理的要因が潜んでいることが多く、無駄遣いが家計を圧迫し、大切な老後資金を切り崩している可能性もあります。
もしも親の変化に気づくことができたら、そのタイミングで次のようなサポートをするとよいでしょう。
1. 「共感」姿勢で寄り添う
頭ごなしに叱責せず、まずはなぜその行動をとったのか、本人の話に耳を傾けましょう。行動の要因が一時的なものか、あるいは認知機能低下など病気のサインなのかを見極めることも大切です。
2. 買い物を「見える化」して自覚を促す
「一緒に片付けよう」と声をかけ、必要なものと無駄なものを選別します。特に、賞味期限の切れた食品などを本人の手で処分させると「もったいない」という自省の念が生まれ、衝動買いを控える動機づけになります。
3. 「代わりの楽しみ」を提案する
悪い習慣をむやみに禁止するよりも、「このお金を貯めて、今度一緒に温泉に行こうよ」などと、前向きなお金の使い方を提案しましょう。“代わりの楽しみ”があるだけで気持ちが安定し、買い込みの頻度も減っていく効果が期待できます。
4. 「お金の管理」を見直す
通帳やカード明細を一緒に整理し、定期的な支出点検を習慣化しましょう。現金やクレジットカードそのものを取り上げると信頼関係が壊れてしまうため、カードの利用限度額を下げるなどの工夫をするとよいでしょう。
5. 専門家に相談する
状態が深刻な場合や、一人では抱えきれない場合には、「地域包括支援センター」など専門機関への相談も検討しましょう。母のその後を生活を支える手助けとなります。