令和5年度の司法統計によると、家庭裁判所に申し立てられた相続に関する争い件数は13,872件でした。毎日のようにどこかで起きている相続トラブル、決して他人事ではありません。「ウチは仲が良いから大丈夫」「ウチには揉めるようなお金がないから大丈夫」といった家庭ほど、いざその時になると油断は禁物です。90歳で大往生した女性とその子の事例をもとに、相続トラブルが生まれる原因とその対策をみていきましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
私のことはいいから…年金月13万円、最期まで子との同居を拒否していた母が逝去→四十九日のあと、遺品整理の場で明らかになった〈母が死ぬまで隠し通した秘密〉
トラブルを防ぐために今日からできること
今回紹介したケースは、きょうだい間での仲が良く、母親の遺言に異論が出なかったため、円満な相続となりました。
実際には遺言書の内容を不服とした争いもゼロではありませんが、効力のある遺言書があるケースとないケースでは、その後の相続手続きに大きな差がでます。キヨエさんのように、「自分の死後、家族に迷惑をかけたくない」と考える場合、遺言書は有効な対策でしょう。
「エンディングノート」の活用も選択肢に
もしも遺言書をのこすことに抵抗がある場合は、「エンディングノート」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。エンディングノートには遺言書のような決まった形式がないため、より自由に自分の思いをのこすことができます。
死後のことだけでなく、存命中の医療や介護の希望も記しておけるため、より幅広い意志を伝えることができるでしょう。
ただし、エンディングノートに法的効力はありません。不安がある場合には、「遺言書」が安心です。それぞれの違いを理解したうえで、目的に応じて使い分けましょう。
いずれにしても、のこされた家族の無用な争いや混乱を避けるためには、自分の意思を伝える手段をあらかじめ用意しておくことが大切です。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/CFP認定者