「60歳未満の配偶者」でも有期化に該当しないケース

また、60歳未満の配偶者であっても、女性(妻)の場合は1989年4月2日以降生まれの人、つまり、改正施行年度(2028年度)で40歳未満の人が対象となり、今後段階的に「40歳未満」から「60歳未満」へとなっていくことになります。

したがって、改正後に60歳未満であっても、必ずしも5年有期の対象になるとは限りません。

なお、遺族厚生年金は配偶者以外の遺族(子、父母、孫、祖父母)に支給されることもありますが、その場合は5年有期の対象にはなりません。

有期支給の対象者でも「5年を超えて」遺族年金がもらえるケース

さらに、前述の(1)~(3)に該当する5年有期の対象者であっても、場合によっては5年経過後も引き続き受給できるケースがあります。

5年経過後の遺族厚生年金は、所得が一定基準額を超えると、その一部または全部が支給停止となります。そして、5年経過後に高所得で2年間継続して全額支給停止となった場合には、遺族厚生年金の受給権が消滅することになっています。

しかし、そうでなければ支給されることになります。また、障害状態に該当し、一定期間内に障害年金の請求をして当該受給権が認められた場合も、遺族厚生年金は支給停止されることなく、継続して全額支給されます。

5年有期の対象者は遅くとも65歳で遺族厚生年金の受給権がなくなりますが、それまでのあいだに条件を満たしていれば、5年を超えて引き続き支給されることもあります。

受給期間が「5年より短くなる」ケース

一方、遺族厚生年金の支給期間が5年に満たないケースもあります。

たとえば、有期の5年経過前の配偶者が、65歳からの老齢厚生年金を65歳よりも前に繰上げ請求した場合です。繰上げ請求すると、その時点で遺族厚生年金の受給権は消滅するため、結果的に5年間支給されないことにつながります。

また、前述の(2)に該当するケースでは、子の遺族基礎年金が終了した時点(すべての子が18歳年度末に到達した時点)で配偶者が60歳以上である場合、そこから65歳までの期間しか遺族厚生年金が受給されません。そのため、結果的に配偶者自身の受給期間が5年に満たないことになります。もっとも、こうしたケースは比較的少ないでしょう。

なお、再婚などの受給権消滅事由に該当した場合も、5年を待たずにその時点で受給権が失われますが、これは現行制度でもあるルールです。