遺言書があっても遺産を分けなければいけないケース

また、遺言書があった場合も「一定の相続人」には遺留分があります。

遺留分とは、最低限保証された遺産の相続分です。遺留分が認められる「一定の相続人」とは、配偶者および両親、ならびに子、孫などが該当します。

これら一定の相続人には遺留分が認められていますが、兄弟姉妹には遺留分が認められないことに注意してください。そのため、兄弟姉妹の代襲相続人である甥や姪にも遺留分はありません。

ともあれ、正一さんは妻の房江さんに迷惑をかけないよう、あらかじめ公正証書遺言を残していました。そのため、正一さんの意志どおり房江さんが半分遺産を取得し、残りの半分は児童養護施設に寄付することができたのです。

今回の事例では、被相続人の周到な準備のおかげで事なきを得ました。しかし子のいない夫婦は、遺産相続で思わぬトラブルに見舞われることがあります。心当たりのある人は、時期を見て準備をはじめましょう。

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/CFP認定者