日本でお金持ちが多い場所と聞くと、東京や大阪、横浜や神戸など、大都市をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、日本にはあまり知られていない“お金持ちの村・町”が数多く存在します。北海道北部・オホーツク海沿岸に位置する猿払村(さるふつむら)もそのひとつです。では、この村の住民はなぜお金持ちなのか、経営コンサルタントの鈴木健二郎氏が、実際の住民の声を交えて解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
ホタテが「豪邸」「フェラーリ」に化けた時代は終わり…〈人口2,600人・平均給与789万円〉北海道・猿払村のいま【お金持ちの地方の実態】
「ホタテ御殿」で知られる“金持ち村”…猿払村が迎えた成熟の時代
北海道北部・オホーツク海沿岸に位置する猿払村。人口約2,600人。2024年の市町村別所得ランキングで全国16位、北海道では安平町に次ぐ第2位に位置し、平均所得は約600万円(給与換算で約789万円)に達する(ZEIMO「2024年(令和6年)市区町村別 所得(年収)ランキング」より)。
道路を走るフェラーリなどの高級車や、海岸沿いに立ち並ぶ「ホタテ御殿」と呼ばれる豪邸が、かつてこの村の豊かさの象徴だった。
1980年代、猿払村は全国でも突出した存在だった。1980〜1985年には、平均所得が400〜540万円台に達し、東京・大阪といった主要都市を抑えて毎年のように全国1位を連発。“日本一の金持ち村”として、全国から注目を浴びていた。
現在も高い所得水準を維持しているが、現地では「昔のような派手さは薄れた」との声も聞かれる。経済的には成熟段階に入り、かつての加速度的な成長から、持続性を重視する時代へと移行したといえる。
オホーツクの海が生んだ「持続する富」
猿払村の繁栄を支えてきたのは、オホーツク海の冷涼な気候と豊かな海洋資源、そして稚貝の採苗・放流・育成が可能な浅瀬地形という天然資源である。これらの条件が、ホタテ養殖にとって理想的な環境を形成している。
1970年代以降、猿払村漁協は天然資源のみに依存せず、稚貝を放流し数年かけて育てる「養殖型ホタテ生産モデル」を確立した。これにより、漁業の計画性と安定性が生まれ、長期的な高収益構造を支える仕組みが整った。
「放流から出荷まで3〜4年はかかります。天候や海水温の変動が収益に直結しますが、それでも猿払は恵まれているほう」と地元漁業者は語る。努力と自然のバランスが、この村の持続的な豊かさを生み出してきた。