“栄光の時代”から40年…猿払村のいま

こうした動きは、単に“ホタテを売る”という構造から脱却し、「猿払というブランド体験を提供する産業」への転換を意味する。まさに、成熟したコア事業を再定義し、無形資産を持続的に活用する地方版“無形資産経営モデル”といえるだろう。

猿払村の事例は、特定産業への依存がもたらす成功と脆弱性の表裏を示している。しかし同時に、自然資源を無形資産化し、組織的にマネジメントすることで、地方が自立的な経済圏を築けることを証明してもいる。

“日本一の金持ち村”と呼ばれた栄光の時代から40年。猿払村は今、「稼ぐ地域」から「経営する地域」へと進化しつつある。そこには、成熟産業を抱える多くの地域にとっての示唆、「見えない資産こそ、次の時代の競争力を生む」という、静かなメッセージが込められている。

鈴木 健二郎
株式会社テックコンシリエ 代表取締役
知財ビジネスプロデューサー