平均給与859万円“お金持ち村”の実態

鹿児島県奄美大島の西部に位置する、宇検村(うけんそん)という村をご存じだろうか?

人口わずか1,600人ほどのこの小さな村、実は、2024年の市区町村別所得ランキングで全国9位にランクインした“お金持ち村”なのである(ZEIMO「2024年(令和6年)市区町村別所得(年収)ランキング」より)。

村民の平均年齢は55歳、平均所得は664万円(給与換算で約859万円)となっている(LIFULL HOME'S「宇検村(鹿児島県)地域情報」より)。これは、国税庁が発表した日本の平均給与額460万円を大幅に上回る。

※給与換算とは……本記事の平均所得は、税務統計に基づく「課税所得額」である。一方、実際の給与額に近い水準に補正するため、社会保険料や給与所得控除を逆算した概算値を「給与換算額」とした。

「村の漁師の車庫には外車が並ぶ」との噂を確かめるべく訪ねた村役場で職員に尋ねたところ、職員は笑いながらこう答えた。

「フェラーリは見たことがないですけど、レクサスやクラウンならよく見かけますよ」

大都市圏から遠く離れた離島で、なぜこれほどの高収入が実現できるのか。宇検村の実態を探ると、そこには“海”という資産を最大限に活用した独自のビジネスモデルが存在していた。

豊かな漁場と“天然の養殖場”

宇検村の海は黒潮の恩恵を受ける好漁場だ。とりわけ宇検湾は波が穏やかで、水質も安定しているため、クロマグロやクルマエビの養殖に最適だという。

「クロマグロは本来回遊魚ですが、ここでは湾内でストレスなく育てられるんです」

そう語るのは、地元漁協の幹部だ。養殖は自然環境の再現が難しいといわれるが、宇検村はその地形と海流によって「天然の養殖場」とも呼ばれている。

この豊かな海は、村にとって“目に見える資産”である。しかし、資源があるだけでは高収益は生まれない。宇検村が注目されるのは、この資産をビジネスとして磨き上げたからにほかならない。