65歳以上の平均貯蓄は2414万円。生活に不安がないにもかかわらず、なぜ彼らは“あえて”働くのでしょうか。その動機は、もはや「年金の補填」や「居場所のなさ」といった、従来のイメージとは異なるようです。丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、シニア世代が実践している新しい働き方とその目的についてみていきましょう。
昔はこんなに暑くなかったのに。子育てもおおらかだったのに…平均貯金額2414万円・生活不安なしの「安泰シニア」が、「若い世代」に向ける“憐みの目”
2.次世代を想い社会課題を解決する「教育、街づくり」
未来を応援するために次世代を支える方法。日本が戦後から立ち上がり、右肩上がりの人口ボーナス期に成功体験を思いっきり味わった昭和世代が、ちょうどいま定年を迎えています。
若い世代を見ていて「かわいそうに」と思うことはありませんか。昔はこんなに暑くはなかったのに、昔はこんなに繊細な子育てではなく転がしておけば育ったのに、次々新しくて便利でおもしろいことが現れてみんなこぞってそれを楽しめたのに、水道や電気、道路や橋などインフラが劣化し、見るからにゴーストタウンになっていく風景を見ていると、未来の街や子どもたちに手渡せる社会をつくらなければ、というのはいまのおとながつくづく感じていることではないでしょうか。
これを思うだけでなく行動に移す働き方です。学びたいだけ学べる教育や、のびのび暮らせる安全な街、ひとり親や共働き家庭のちょっとした食や見守りの支援、ともに笑い合い助け合えるような住宅づくり。文化施設の整備、商店街の活性化、街の商店の活用など、数え上げると際限なくあります。
こうした、未来を生きる人たちのために、いまを生きる人たちが全力でサポートする、知恵をしぼることは、日本だけでなく世界中で求められています。人生後半期の時間をただ楽しみだけに消費するのではなく、自分の寿命が尽きたあとを幸せにするために生きるのは、シンプルにかっこいいと思うのです。
3.自己実現が「シニア世代のお手本」になることも
そして、自己実現のためにやっていたらシニア世代のお手本になる方法。
ある男性から聞いた話です。「実は子どものころからしたいことがあった。けれど長男だから、結婚したから、という理由で見ないふりをしてきた。30代・40代という責任世代を生きるのに自己犠牲を続けてきた。ひと通りの役割を終え、やっと自分の思うとおりに生きられる準備ができた」と言います。
昨今こういう人たちが何十年越しに「子どものころの夢を叶える」という生き方をしています。ここでも年齢は考えないでいてほしい。ただの数字、ただの背番号。もう還暦だから、年寄りだから、できないと判断するのは昔話です。
写真家を自称する人、ダンスをはじめる人、油絵をはじめる人、英語留学に出る人、ケーキ屋さんをはじめる人、バックパッカーをしながら世界を歩く人、いろいろいます。そういう姿はかっこいい。何十年もあたためてきたしたいことをしているのですから、最高の笑顔。たしかに、膝が、腰が、目がと、不具合もあるでしょう。更年期で汗がダラダラする人もいますが、それが何か関係ありますかと言わんばかりの熱量で、自分を楽しんでいます。
もしかしたら、これまであまりスポットライトが当たらなかったレアな存在かもしれませんが、実は身近なところで、こんな生き方できたらいいなと思えるスーパー高齢者が増えているのも、この世代ならではです。
働くというより、生き方。思いっきりかっこいい生き方を見せびらかしましょう。20代の人たちが「長生きなんてしなくていい」なんて言っているのを「年を取るのっていいな」と憧れのため息まじりで言わせたいですよね。
◆ここまでのまとめ◆
●まとまった資産をもっている人が定年後も働くのには理由がある
●社会にいい影響を与える姿を見せる「新しい働き方」はかっこいい
丸山 法子
株式会社Rensa 取締役/福祉事業部 リエゾン地域福祉研究所 代表
※本記事は『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。