高級マンションに住み、ブランド品を身につける一見"裕福そうな"78歳主婦。しかし実際には、固定資産税や管理費に年100万円、使わない別荘の維持に年50万円――年金だけでは賄えず、預金を取り崩す日々が続いています。かつての豊かさが、今の重荷に。見た目リッチに潜む老後の落とし穴"暮らしを軽くする勇気"について、ファイナンシャルプランナーの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
上品なスーツとブランドバッグに身を包み、都心の高級マンションで暮らす78歳年金女性。一見“優雅なマダム”だが…「年110万円の赤字」「金食い虫の別荘」毎日脅えて暮らすワケ
「見た目リッチ」老後が増えている――資産はあっても"使えない"現実
節子さんのように、「お金がないわけではないのに、自由に使えない」という高齢者は少なくありません。
総務省の家計調査によると、65歳以上単身世帯の平均支出は月約15万円です。節子さんの実際の支出は月約30万円。年金収入(月20万円)では到底賄えず、持ち家の維持費が重い世帯では、赤字は避けられません。
さらに今、物価上昇や修繕積立金の増額など、「老後の固定費」が想定を超えて膨らんでいます。年金の増額効果も、管理費や公共料金などの上昇に追いつかず、実質的な手取りは目減りしているのです。
「年金で足りない分は貯金を取り崩せばいい」と言われても、定期預金を崩す心理的ハードルは高く、資産が"死蔵"されてしまうケースは多く見られます。
また、不動産を多く持つ層ほど、維持費や税金の負担が重くなります。節子さんのように別荘を所有していても、買い手がつかず維持費ばかりがかさむケースは珍しくありません。実際には"流動性のなさ"が家計を圧迫する構造です。
かつての豊かさが今の生活の重荷になる――。「見た目リッチ・中身ギリギリ」は、誰にでも起こりうる"老後の落とし穴"といえるでしょう。