父の姿からサラリーマンとしての成功は「長く勤めて出世すること」だと信じていた。しかし、同僚と上司の言葉に常識が覆される――。30歳目前でサラリーマン生活に終止符を打ち、"どこでも生きていける"ための個人事業をスタート。現在は世界を旅しながら2児を育てる森翔吾氏の著書『すべては「旅」からはじまった 世界を回って辿り着いた豊かなローコストライフ』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編して、著者が退職を決意した理由を見ていきましょう。
「会社員のままじゃ暮らしていけない…」29歳男性が脱サラを決意した「年収600万円を稼いでも貯金は0円」絶望のシミュレーション
将来の生活をシミュレーションして絶望。このままでは暮らせない!
翌年、東日本大震災が起きた。放射線測定器や医療機器などの需要が増え、会社で扱う中国からの輸入商品も数倍に増え、過去最高の売り上げを叩き出した。
「森くん、よく頑張ってくれたね」と社長が労いの言葉をかけてくれるほど、仕事が忙しかったことをよく覚えている。しかし、一瞬にして生活が一変してしまう大震災を目の当たりにして、自分の将来も真剣に考えることになった。
将来、結婚して子どもが2人できた場合を想定し、生活費がどのくらいかかるのか、シミュレーションした記録が、今も残っている。29歳のとき、僕は東京駅に近いながら閑静な文京区に住んでいた。文京区で家族4人が快適に暮らせる60㎡のマンションは、2013年当時で家賃20万円、購入すると6000万円(現在なら1億円以上)ほどだった。
そんな一等地にマンションを購入するのは無理なので、メモにはこう記してある。
【条件】
● 都心から電車で40分程度のマンション
● 妻、子ども2人の4人家族
【毎月の出費】
● ローン 10万円
● 光熱費 3万円
● 食費 6万円
● スマホ・インターネット代 1万円
● お小遣い(夫婦) 6万円
● 娯楽費、旅行代 3万円
● 教育費 3万円
● その他 5万円
合計:37万円
もしも、35歳で年収600万円だったとすると、
● 月収 50万円
● 社会保険・住民税など 13万円
手取り:37万円
ということは、「給与=生活費」になるので、貯金は0円! 夫婦共働きをすれば、数字は変わってくるかもしれないが、この数字を見て、僕は絶望的な気持ちになった。「このままサラリーマン生活をしていたら、理想の生活は絶対に送れない!」つくづくそう思った。
会社を辞めることを考え始めた26歳のときに、「もし1年後に英語力を身に付けるか、仕事に役立つ何らかの資格取得ができなかったら会社を辞めでもしない限り、一生このまま何も身につかず、あっというまに40歳、50歳と年をとってしまうだろうな」そう考えていたのだが、約3年が経過し、29歳になってもまったく結果が出ていなかった。焦っていた。
そうした理由から、僕は29歳でサラリーマンを辞めようと決意した。
森 翔吾