2025(令和7年)9月、東京都で「保育料等の第一子無償化」が始まりました。子育て支援として大きな前進ですが、恩恵を受けられるのは都民だけ。「東京だけずるい」「引っ越そうかな」そんな声も聞こえてきますが、実際そう単純ではないようです……。本制度を知り、都内への引っ越しを検討し始めた30代夫婦の事例をもとにみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
東京に住みたい…都の〈保育料無償化〉に感動した31歳女性、横浜からの引っ越しを夫に懇願→「やっぱりやめた」とスマホを放り投げたワケ【CFPの助言】
横浜市に住み続けた場合の保育料
このまま横浜市で暮らし、麻衣さんが仕事に復帰した場合、保育料は月に約5万円になる予定です。
子どもが3歳以降は自治体にかかわらず無償ですが、いまから東京に住めば、0歳から2歳までの3年間の保育料が無償になります。
また、国の制度として3歳未満には月額1万5,000円(第3子以降は3万円)の児童手当がありますが、東京都にはさらに「018サポート」という給付金の制度があります。
018サポートは、都内在住の0歳から18歳までの子どもを対象に「月額5,000円」支給される制度で、東京都独自の子育て支援制度です。
また、東京都は子にかかる医療費についても助成制度が充実しています。現在、東京23区では所得制限もなく、高校を卒業するまでは病院に行っても自己負担はかかりません。
一方、麻衣さんの住む横浜市は、子どもの医療費助成制度は中学生までとなっています。
「ほらほら、東京は保育料は無償だし、高校生まで学費も医療費もかからないよ。もうこれは東京に住んだほうが絶対お得だよ! 引っ越そう!」
夫は乗り気ではなさそうでしたが、麻衣さんは“都民になりたい”という思いもあり、すっかりその気に。
「東京は児童館も多いし、育休中もワンオペしやすいかも!」
夫を無理やり説得して、本格的に引っ越し先を探し始めたのです。
麻衣さんが見落としていた、東京移住の“致命的なデメリット”
「新宿や渋谷まで30分くらいで行けたらいいな」
ウキウキで物件を調べ始めた麻衣さん。しかし……
「えっ、ウソ、都内の家賃ってこんなに高いの!?」
麻衣さんが希望する地域の家賃相場は、現在と同様の間取りで月17~18万円ほど、人気エリアで少し良い条件を求めると、あっという間に20万円を超えます。保育料以上に、家賃によって家計が圧迫されそうです。
「ほら、お得じゃないじゃん」
夫は呆れたようになだめます。しかし、麻衣さんも簡単にはあきらめません。
「でも、高校だって無償なのよ……」
「保育料がかからなくてお得なのは最初の3年間だけでしょ。ここに住んでいれば、そのあとは貯金もできるけど、東京に住むとその高い家賃がずっとかかるんだよ」
「そのときはマンションを買えばいいじゃない!」