2025(令和7年)9月、東京都で「保育料等の第一子無償化」が始まりました。子育て支援として大きな前進ですが、恩恵を受けられるのは都民だけ。「東京だけずるい」「引っ越そうかな」そんな声も聞こえてきますが、実際そう単純ではないようです……。本制度を知り、都内への引っ越しを検討し始めた30代夫婦の事例をもとにみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
東京に住みたい…都の〈保育料無償化〉に感動した31歳女性、横浜からの引っ越しを夫に懇願→「やっぱりやめた」とスマホを放り投げたワケ【CFPの助言】
東京だけ、ずるい…子育て世帯の羨望
東京都では、子育て支援の一環として、2025(令和7)年9月1日から「保育料等第一子無償化」制度が始まりました。年齢や所得にかかわらず、認可保育所等を利用するすべての世帯が対象となります。
「東京だけ、ずるい……!」
中川麻衣さん(仮名、31歳)は、スマホ片手に思わず声を漏らしました。
麻衣さんは、3歳年上の夫と横浜市の賃貸マンションに住んでいます。世帯年収は約800万円(夫500万円、妻300万円)で、家賃は月に約11万円です。
もっとも、麻衣さんは産休中で間もなく3人家族となる予定のため、しばらくは夫の年収のみで生活することになります。
実は麻衣さん、現在の住まいに多くの不満がありました。というのも、住んでいるマンションは築年数も古く、赤ちゃんを迎えるには部屋数も足りません。また、横浜市内とはいえ、みなとみらい辺りまではバスと電車を乗り継いで1時間近くかかります。
「でも、これから色々とお金がかかるし、我慢しないと」
そんなとき目にしたのが「保育料等第一子無償化」制度のニュースです。そして、ひらめきました。
「これなら都内に住んだほうがお得なのでは……?」
というのも、中川夫妻の勤務先はどちらも東京都内でした。夫は毎日、満員電車に揺られながら1時間以上かけて通勤しています。
思い立った麻衣さんは夫を説得すべく、早速色々と調べ始めました。
保育料無償化の変遷
国の「幼児教育・保育の無償化」制度として2019(令和1)年10月に始まった保育料の無償化制度は、3~5歳児全員と、0~2歳児のうち住民税非課税世帯の子どもの保育料が無償化されるというものでした。
そんななか東京都では、2025(令和7)年9月から、第1子も含め、認可保育所等を利用するすべての世帯を無償化の対象とします。これにより、所得や子どもの年齢といった条件によって差があった負担が一律となりました。