子どもが成長するなかで、「わが子にとってよりよい生活環境を」と、住まいを見直す人も多いでしょう。しかし、その選択が必ずしも理想の暮らしにつながるとは限りません。タワーマンションから郊外の戸建てへ住み替えたものの、予想外の後悔に直面した共働き夫婦の事例をみていきましょう。住まい選びで後悔しないために知っておきたいポイントを、辻本剛士CFPが解説します。
タワマンに戻りたい…子どものため〈郊外の庭付き一軒家〉に引っ越した世帯年収1,600万円の40代共働き夫婦、わが子は大満足も「心底後悔しています」と嘆くワケ
子どものために…タワマンから一軒家に引っ越したパワーカップル
近藤勇人さん(仮名・42歳)は、同い年の妻と6歳の息子の3人家族です。
勇人さんは上場企業に勤めるエリートサラリーマンで年収1,000万円、妻も専門職として働いており年収600万円と、世帯年収は約1,600万円あります。数年前、夫婦は思い切って9,000万円のタワーマンションを購入しました。
管理費は高額でしたが、セキュリティーは三重四重に整えられ、駅近という利便性もあり、日常生活はとても快適でした。しかし、息子がもうすぐ小学校に上がる時期を迎えると、夫婦は改めて「子どもにとってどんな環境がいいのか」を考えるようになります。
タワマンは便利ですが、どうしても室内で足音や走り回る音に気を遣います。生き物を飼いたいという息子の願いも、マンションの規約を考えると難しい部分がありました。
一方、戸建てであれば、足音も気にせず思いっきり遊べる環境が整います。犬などのペットも飼いやすく、近所の子どもと顔を合わせる機会も自然と増え、地域のコミュニケーションが生まれやすくなるでしょう。
こうして夫婦は悩み抜いた末、「息子のために引っ越そう」と決心します。
幸運にもタワマンの売却価格は購入時と同じ9,000万円となり、住宅ローン残高との差額として3,000万円が手元に残りました。その資金を頭金に充て、郊外にある7,000万円の庭付き一戸建てを購入しました。
新居に引っ越したその日。玄関を開けると、大きな自宅と広い駐車場が広がり、勇人さんは「ドアを開けてすぐ車に乗れる生活がこんなに快適なのか」と驚きました。
また息子は走り回っても足音を気にする必要がなく、長年願っていた犬を迎え入れることもできそうです。
「この家を選んでよかったな」
そう思える穏やかな時間が、近藤家に広がっていきました。