2025(令和7年)9月、東京都で「保育料等の第一子無償化」が始まりました。子育て支援として大きな前進ですが、恩恵を受けられるのは都民だけ。「東京だけずるい」「引っ越そうかな」そんな声も聞こえてきますが、実際そう単純ではないようです……。本制度を知り、都内への引っ越しを検討し始めた30代夫婦の事例をもとにみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
東京に住みたい…都の〈保育料無償化〉に感動した31歳女性、横浜からの引っ越しを夫に懇願→「やっぱりやめた」とスマホを放り投げたワケ【CFPの助言】
麻衣さんに“とどめを刺した”衝撃の事実
高騰を続ける東京23区内のマンション価格
不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向」によると、東京23区の新築分譲マンション平均価格(2025年8月)は約1億3,800万円でした。一方、神奈川県は約6,500万円です。
「同じ広さ・同じ質」の住まいを実現させるには、約2倍の予算が必要になってしまいます。
(月々の保育料が安くなったとしても、これじゃあなんの意味もない……わざわざいまより高い家賃を払って、いまより狭い部屋に住みたくないし……いつかはマイホームも欲しいけど、都内じゃとても手が届きそうにない……)
「やっぱりや~めた」
スマホをソファーに放り投げた麻衣さんに、夫は肩をすくめていました。
スマホを放り投げて、ふと部屋を見渡した麻衣さん。古いマンションですが、テラスからの眺め、お気に入りのカーテン、夫が組み立てた本棚、少しずつそろってきた赤ちゃんのためのスペース。
「まあ、ここで暮らすのも悪くないか」
支援制度は暮らしを見直すきっかけに
中川夫妻はこの話し合いをきっかけに、いまよりも少し広く、都内へのアクセスも良い横浜市内の賃貸マンションに引っ越しました。
今回紹介したケースのように、保育料無償化をはじめ、さまざまな支援制度を知ることは、暮らしを見直すきっかけにもなります。
その際、家計の収支だけでは見えてこない「暮らしやすさ」や「心のゆとり」といった大切な資産も念頭に、支援制度を自分たちの暮らしに引き寄せながら、上手に活用していきたいものですね。
石川 亜希子
CFP