「おじいちゃん、120円だけだから買って!」かわいい孫にスマホを貸し、ゲーム課金を一度だけ許可。そんな何気ない“善意”が、数十万円の高額請求に……。国民生活センターには、小中学生を中心としたオンラインゲームの無断課金トラブルの相談が、多く寄せられています。本記事では、CFPの伊藤寛子氏が、オンラインゲーム課金の実態と、トラブルに巻き込まれないための予防策について、大橋さん(70歳)と孫の健太くん(8歳・いずれも仮名)の事例をもとに解説します。
「こんな大金使った覚えないぞ…」70歳年金暮らし男性、まったく心当たりのない「57万5,500円」のクレカ請求に震え。原因は夏休みに遊びに来ていた「可愛い8歳の孫」【CFPの助言】
オンラインゲームの裏側に潜む“課金の仕掛け”
スマートフォンアプリでは、一度クレジットカード情報を登録してしまうと、その後パスワードの再入力なしに簡単に決済ができてしまう場合もあります。大橋さんはその仕組みを知らずに、情報を登録してしまっていたのです。
そして健太くんは、「一度買ってもらった」ことで、ゲーム内アイテムを購入する心理的なハードルが大きく下がってしまいました。
健太くんが遊んでいたゲームには、「ガチャ」と呼ばれる、ランダムで貴重なアイテムが手に入る仕組みがありました。友達が持っている強力なキャラクターが欲しかった健太くんは、レアアイテムが当たるまで、と「ガチャを回す」ボタンのタップを何度も繰り返しました。
画面に表示されるのは「コイン」や「ジュエル」といった架空の通貨で、健太くんはだんだんと「お金を使う」感覚ではなくなっていったのです。決済もタップひとつで済んでしまうことも、その要因です。
「知らぬ間に課金」の被害が広がっている理由
大橋さん夫婦のケースは、決して特別な話ではありません。国民生活センターには、子どもが無断でオンラインゲームに課金してしまった、という保護者からの相談が多く寄せられているそうです。
契約当事者が小学生から高校生までの相談件数は4,024件(2022年度)で、契約購入金額の平均は約33万円と高額です。特に、スマートフォンやタブレット端末での小学生・中学生の無断課金に関する相談が目立つそうです。なぜ、これほどまでに被害が拡大してしまうのでしょうか。
・“お金を使っている感覚”を失わせるゲーム設計
「今だけ限定」「ガチャ(くじ引き)」など、子どもが夢中になる要素が巧妙に設計されています。さらに、実際のお金を「コイン」や「ジュエル」などゲーム内の通貨に置き換えることで、“お金を使っている”という実感が薄れ、ためらいなく使ってしまう仕掛けになっています。
・スマートフォンの「決済(支払い)の仕組み」を知らない
シニア世代の中には、スマホ決済の仕組みや安全設定を十分理解していない方も少なくありません。「一度クレジットカードを登録すると、次からパスワードなしで簡単に買えてしまう」「課金に制限をかける設定がある」などの基本を知らないまま使っていると、トラブルを防ぐことができません。