身に覚えのない請求金額…発端は“一度きり”と思っていた孫への善意

夏の終わり、郵便受けに届いた一通の封筒。大橋さん(70歳・仮名)は、いつものようにクレジットカードの利用明細書を開き、そして絶句しました。

「ご請求額:575,500円」

そこに印字されていたのは、まったく心当たりのない金額です。「不正利用にあったのか?」と思いながら震える手で明細をたどると、見慣れない会社の名前が何十行にもわたって並んでいました。隣で覗き込んだ妻が、はっと息をのみます。

「あなた、この日付、健太が遊びに来ていた時じゃ」

その瞬間、大橋さんは、夏休みに遊びに来ていた孫の健太くん(8歳)の顔を思い浮かべました。猛暑日で外に出かけられず家で過ごしていた時に、健太くんから「いつもお父さんのスマホでやっているゲームをしたい」とお願いされ、軽い気持ちで自分のスマートフォンを貸したことを思い出しました。

しばらくすると、スマホゲームで遊んでいた健太くんから、「おじいちゃん、すごいキャラクターがいるんだ! 今だけ限定なんだって!」スマホの画面を大橋さんに見せながら興奮気味に話しかけてきました。

「これ、120円だけだから買ってもいい? お願い!」

画面には、確かに「¥120」の文字が見えます。かわいい孫にねだられた大橋さんは、「ジュース1本分くらいだし、1回くらいならいいか」と思い、「よし、それくらいならいいぞ」と言って、健太くんの目の前でクレジットカード番号とセキュリティコードを入力し、アイテムを購入しました。

「ありがとう、おじいちゃん!」

そう言って、健太くんはさらにゲームに夢中になって遊んでいました。このとき、大橋さんはまさかこの一度きりの“善意”が、50万円を超える悪夢の引き金になるとは、夢にも思っていませんでした。