体力には自信があったのに

子どもの頃から運動は好きだった。小学生ではドッジボール、剣道、野球、中学でバレーボールがわりと得意だった(が、足は遅かった。なんだそれ?)。

18歳からほぼ10年間、空手道場に通った。準備運動から技全般を覚え、体を動かすことについては自信がつき、そのイメージが70を超えたいまになっても、抜けきらないのである。体力は40代くらいに思っているのだ。

しかし若いもんには負けん、とは思わない。年を取ると一般に、老人は若いものをライバル視して、若いもんにはまだ負けんよ、といいたがる。もうその時点で負けているのだ。若いもんは年寄りなど眼中にないのである。

わたしは50代頃まで体力には自信があった。7月生まれだから、夏の暑さには強いんだと、つまらんことを自慢していた。暑さに弱音を吐くやつがいると、夏だから暑いのはあたりまえじゃないかと憎まれ口をきいた。60代に入っても、真夏の昼下がり、近所の公園のベンチに何時間もいて、体を焼いていたりしたものだが、いったいなにを考えていたのか。

よく熱中症にならなかったものだと思っていたら、10年ほどまえ、奈良に行ったときに、法隆寺行きのバス停でクラッとなり、倒れそうになった。はっきりしないが、たぶん熱中症だったのだろう。水を飲み、ベンチで休んで事なきをえた。それ以来、体力に関して強がりをいったり、意地をはったりはしないようにした。

60代の後半あたりから、めっきり暑さに弱くなった。冷房がないと耐えられなくなったのである。考えてみれば、7月生まれもへちまもない。ただ強がっていただけで、年を取るにつれ、その強がりも意地もなくなったのである。寒さにはもともと弱い。すきま風みたいな薄ら寒いのもだめである。