いつまでたってもわが子はかわいいもの。ただし、「かわいい子には旅をさせよ」ということわざがあるように、本当にかわいいと思うのであれば、過度な甘やかしは厳禁です。息子の“トンデモ発言”に思わず「育て方を間違えた」と悔いる60代夫婦の事例から、お金が絡んだ親子関係の厄介さをみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
お前、本当に私たちの子か?…貯金1,400万円・年金暮らしの60代夫婦が「毎週」帰省してくれる“孝行息子”に怯えるワケ【CFPの助言】
夫婦の悩みのタネは、近くに住む36歳のひとり息子
そんなA夫婦には、ひとり息子のCさん(36歳)がいます。Cさんは、夫婦の自宅から電車で約30分の賃貸マンションに、会社員の妻と7歳の子どもと暮らしていました。
その息子が、毎週末帰省しては「いま買わないとますます高くなっていく」「子どもには質の高い教育を受けさせたい」などと、金銭援助の“おねだり”を繰り返すのです。
きっかけはAさんの退職祝い。Cさん家族が企画してくれたパーティーで浮かれたAさんは、年金収入や貯金額について、Cさんに聞かれるまま話していました。
以降、毎週のように帰省しては“おねだり”を続けるCさん……CさんはAさんの話を聞いて、両親からの援助を当て込んだようでした。
実はA夫婦、Cさんの結婚費用を全額負担していました。その際「今後は援助しないから自分たちで頑張れ」と話していたにもかかわらず“おねだり”を繰り返すCさんは、その話を覚えているかも定かではありません。
そしてなにより、現在A夫婦には息子家族を援助するだけの資金を持ち合わせていません。
「親の援助に頼らないと買えない家や通わせてやれない学校なんて、身の丈に合っていない選択はやめたらどうだ?」
ある日、しつこい息子の訪問にしびれを切らしたAさんがこう諭します。するとCさんはまさかの言葉を返します。
「どうせいつか相続で俺が受け継ぐんだから、いまもらっても一緒だろ? このマンションも2人だと広すぎるだろうし、売って引っ越したらどう?」
悪びれる様子もなく言い放つCさんに両親は絶句。以降、毎週「いま考えているから」と適当に話を切り上げ、Cさんを帰らせます。
とはいえ、このままでは埒が明かないと、息子への援助が可能かどうか客観的な意見を聞きたいと、筆者のもとを訪れたのでした。
退職直後の家計は赤字
総務省「家計調査報告(家計収支編)2024年平均結果の概要」によると、65歳~69歳の夫婦のみの無職世帯(世帯主の平均年齢67.2歳)の家計収支は、月に4万4,945円の赤字となっています。
・実収入:30万7,741円
・可処分所得:26万6,336円
・消費支出:31万1,281円
・平均消費性向(※):116.9%
(※)平均消費性向……可処分所得のうちのどれだけを消費に使うか、その割合を示す指標のこと。値が100%以上なら家計は赤字。
A夫婦はというと、定年後間もないこともあり、生活水準は現役時代とさほど変わっていません。支出額は約38万円と赤字で、足りない分は貯金を取り崩しながら生活しています。
そのため、A夫婦が無策でこのままの生活を続けると、80代後半で家計が破産する可能性がありました。
もっとも、生活費は加齢とともに減少する傾向にあります。また保険料や各種サブスク、スマホキャリアの変更など、その他の固定費などを削減して支出を減らす余地はありそうです。