定年退職後も働くシニアが増えている

総務省「労働力調査(2024年度平均)」によると、65歳以上の就業者数は前年度より全体で20万人増加しています。

[図表] 65歳以上の就業率 出所:総務省「労働力調査2024年度(令和6年度)」を参考に筆者作成
[図表] 65歳以上の就業率
出所:総務省「労働力調査2024年度(令和6年度)」を参考に筆者作成

長寿化に伴って「長生きリスク」という言葉も生まれるなど、定年退職後のライフプランの重要性が増している昨今、定年退職後も働く人が増えています。

このなかには「生活のため」と仕方なく働いている人がいる一方、仕事に楽しみを見出し、再雇用先で豊かな人生を謳歌している人もいるようです。

元警察官が定年後に選んだ再就職先

元警察官のAさん(63歳)と専業主婦のBさん(60歳)は、持ち家の戸建に2人で暮らしています(住宅ローンは完済)。

AさんとBさんはどちらも子ども好きでしたが、Bさんが40歳を過ぎたころ、子どもを諦める決心をしました。以来、Aさんは「いつかは子どもたちの成長をそばで見守るような仕事がしたい」と考えるように。

そして定年退職後、念願が叶い「放課後子ども教室(※)」の支援員となったのでした。

※放課後子ども教室とは……小学校の余裕教室などを活用して、放課後や夏休みなどに児童の学習や体験活動などを支援をする取組(事業)。地域によって呼称は異なる。

元部下と再会

「えっ、Aさん!? ご無沙汰しております。でも、なんでこんなところに……」

Aさんはある日、放課後子ども教室に通う小学校1年生の少女の父親から声をかけられました。

その父親とは、Aさんが現役時代に一緒に働いたことのある元部下(Cさん)です。

「おぉCくんか! 久しぶりだね。そうか〇〇ちゃんは、Cくんの娘さんだったんだ。君たち夫婦は〇〇ちゃんを可愛がっているんだね。よく君や奥さんのことを話してくれるよ」と、現役時代と同様に、穏やかな笑顔で話します。

世間話もそこそこに、CさんはAさんに率直な疑問をぶつけました。

Cさん「でも、元警察官のAさんがなぜこのような場所で働いているのですか?」

Aさん「定年後は子どもにかかわる仕事がしたいとずっと考えていたんだ。私たち夫婦には子どもがいないからね。わが子じゃなくても、未来ある子どもたちの役に立ちたいと思って」

Cさん「でも……」

Aさん「もう3年くらい経つけど、週に3回か4回、夏休み期間も同じようなペースで働かせてもらっているんだ。いやあ、子どもの成長は早いね! 子育ては大変だろうけれど、一緒に過ごせる君たちがうらやましいよ」

Cさんは、自分や後輩たちの近況をしばらく話して、娘と帰って行きました。