現役時代に高所得だった人が、引退後も生活水準を落とせずに苦労するケースは少なくありません。一方、そんな状況でも“第二の人生”を楽しむ人もいます。老後に必要な資金の準備とセカンドキャリアの考え方について、元銀行員の事例をもとにみていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
(※写真はイメージです/PIXTA)
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役員に上がれなかった元・地方銀行の支店長…引退後のリアル
ある地方銀行の支店長だったAさんは、55歳で定年をむかえ、取引先会社に部長待遇で出向となりました。
これにより、Aさんの年収は1,300万円から780万円に減額。ただ、Aさんは自宅マンションの住宅ローンを完済しているほか、2人の子どもはすでに独立してそれぞれ家庭を持っています。そのため、4歳年下の妻Bさんと今まで通りの生活をしても支障はないと考えていました。
また、Aさんには元支店長というプライドもあり、出向先でも社員を飲みにつれていくなど派手にお金を使っていたそうです。
そんななか、家計を任されていた妻Bさんは、定年後も現役時代の生活水準を維持するAさんを心配していました。
「今の会社には60歳までしか勤められないのでしょう。年金は65歳からだし、このままでは65歳になる前に家計は破産よ! 銀行の支店長がそんなこともわからないのですか」
Bさんは預金通帳を見せながら、Aさんに何度も節約を促したといいます。
しかし、Aさんに危機感はありません。60歳で完全リタイアして、その後は悠々自適に過ごすという人生設計を変えるつもりはなかったのでした。
「シニアの働き方」の実態
そんなAさんはある日、内閣府「令和2年高齢者の経済生活に関する意識」の調査結果を読む機会がありました。
そこで、60歳以上の男女の約4割(37.3%)が、なかでも男性は60代前半が85.8%、60代後半でも60.1%の人が働いていることを知ります。
「これだけの多くの同世代が働いているのか……。Bも老後の生活を心配していたし、60歳で完全リタイアするという自分の考えは古いのかもな」
こうしてAさんは、60歳以降も働こうと考え直したのでした。