「介護を他人に任せてもいいのだろうか…」そう悩む多くの介護者に向けて、「コンビニくらい気軽に介護サービスを頼ってほしい」と語るのは、施設の生活相談員を務めながら介護職員としても現場に出る介護のプロ、のぶ氏。本記事では、のぶ氏の著書『読むだけで介護がラクになる本』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集し、介護や介護サービスに対する考え方をご紹介します。
「自分の親の介護が終わったと思ったら、次は夫の親。もうメンタルが限界…」終わりのない〈在宅介護の負担〉を軽減する方法
介護者が抱える葛藤…「他人任せにしてもいいのかな?」
在宅介護が美談のように語られることがありますが、現実はそう単純ではありません。終わりの見えない在宅介護の中で、金銭的な負担や心の不安定さに悩まされている方は少なくないです。
「顔を見るだけで手をあげそうです」
「もうニオイだけでも限界です」
「自分の親の介護が終わったと思ったら、今度は夫の親の介護……メンタルが壊れそうです」
と、涙ながらに訴える介護者をたくさん見てきました。そんな方々に「在宅介護は素晴らしい」「在宅介護が子どもとしてのつとめです」とは、口が裂けても言えません。とにかく無理だけはしないでいただきたいし、コンビニくらい気軽に介護サービスを頼ってほしいと思います。
在宅介護で利用できるサービスにはデイサービスや訪問介護、ショートステイなどがあります。
「他人任せにしてもいいのかな?」
「介護サービスに頼っていいのかな?」
と不安になることがあるかもしれませんが、みんなあなたの味方です。介護サービスを受けることに罪悪感を抱く必要はありません。
認知症の母親とふたり暮らしで、懸命に在宅介護をする息子さんがいました。毎朝、「お母さんごめんな」と言いながら、玄関に鍵をかけて仕事に出かけます。外側から鍵をかけることで、母親が外に出られないようにするための対策です。
当時、関係者は虐待だ!と騒ぎ立てましたが、息子さんが母親の安全を第一に考えての行動でした。ていねいに関わってみると、ご本人の服装はいつも清潔に保たれ、髪の毛もきれいに整えられていました。介護サービスの利用を増やすことによって、鍵をかける必要もなくなりました。
在宅介護をされている方々は、ギリギリのところでがんばっていることが多いです。介護サービスを活用すれば、負担が軽減され、心の余裕が生まれ、より良い関わりができるはずです。