家族だからこそ、むしろ難しい――それが介護です。本記事では、施設の生活相談員を務めながら介護職員としても現場に出る介護のプロ、のぶ氏による著書『読むだけで介護がラクになる本』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集し、家族介護の難しさと、家族が家族らしくいられるために知っておきたい、介護サービスの意義について解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「なんでわかってくれないの」「なんで私だけ」と苦しむ日々…大切な親の介護なのに〈猛烈なストレス〉を抱え込んでしまうワケ
家族の介護…「なぜこんなにイライラするのだろう?」
家族の介護は、ただの「お世話」ではなく、相手への深い「情」が入ってくる分、本当に難しいです。ぼくも頸椎損傷で首から下が動かない父の介護と、90代の祖父の介護をしているので気持ちが痛いほどわかります。
「用事があるとき以外、呼ばないで!」
父に、思いきり強い口調で伝えたことがあります。自室から、「おーい、おーい」と何度も声をかけてくるのです。要件は「水を飲ませてくれ」「テレビを消してくれ」「体の向きを変えてくれ」「ただ誰かがいるか確かめたかっただけ」というもの。自分の体が動かないから仕方ない」と頭では理解していても、我慢ができませんでした。
毎日毎日、同じことの繰り返しでいつ終わりが来るのかわからない。ストレスがたまり、つい「なんでわかってくれないの」とか「なんで自分だけ……」とイラついてしまったり。相手を大切に思えば思うほど、「どうして、こんなふうになってしまったのか」と苦しみ、「もっとちゃんとしなきゃ」と自分を責める瞬間も増えました。
あるとき、冷静になって、自分自身に問いかけてみました。介護職としても長年仕事をしてきたのに、「なぜこんなにイライラするのだろう?」と。その答えは「家族だから」ということに気づきました。