家族を老人ホームに預けることに対して、後ろめたい気持ちを抱く人は少なくありません。もしかしたら、それは施設に対するネガティブなイメージを持っているからかもしれません。本記事では、施設の生活相談員を務めながら介護職員としても現場に出る介護のプロ、のぶ氏による著書『読むだけで介護がラクになる本』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集し、現代の老人ホームの環境や入居者の暮らしについて解説します。
「老人ホーム=姥捨て山」はもう古い!
「老人ホーム=姥捨て山」という誤解が、いまだに多くの人々の中に根強く残っているようです。
かつて、親の面倒は子どもが見るのが当たり前とされていた時代がありました。そのため、親を施設に入れることは後ろめたい行為とされ、近所の方から「親を施設に入れたらしいよ」と白い目で見られることも少なくなかったと聞いています。
昔の老人ホームでは、認知症の方が動き回らないようにお腹のあたりを太いベルトで拘束したり、オムツの中の排泄物を触らないように鍵付きのつなぎ服を着せられている方もいました。
このような過去のイメージが、「老人ホーム=かわいそうなところ」という考え方を生み、それがいまだに残っているのです。
しかし、現代の老人ホームはそのような場所ではありません。現在では、身体拘束や虐待は介護保険法や老人福祉法によって厳しく規制されており、施設では年に何度も高齢者虐待防止研修を実施しています。
また、毎月行われる定例会議では、不適切な対応がなかったかどうかを振り返り、徹底的に確認しています(虐待になる前の不適切な対応を防止するための取り組みです)。
老人ホームは開かれた雰囲気に変わってきています。週末になると、お子さんやお孫さんが面会に訪れたり、定期的に自宅へ外出する方も少なくありません(コロナ禍のときは自由な外出や面会ができず、もどかしい思いをしました)。
施設によってルールや制限はありますが、自由度は非常に高く、入居者さんの希望にそった自分らしい生活を送れる環境が整ってきました。
老人ホームに入居することは、「大切な人を捨てた」とか「もう一生離れ離れ」ということではありません。暮らしの拠点が、自宅から老人ホームに変わるだけです。