精肉コーナーをよく見渡してみると、「和牛」と表記されているパックがある一方で、「国産牛」と表記されているパックもあることに気がつきます。その違いはなにかご存知でしょうか? 本記事では、2005年に本格的に焼肉にハマって以来、年間100店舗以上もの焼肉店を巡るだけでなく、生産現場にまで足を運び、牛や餌に関する知見を深め、肉の焼き方や部位の特性を独自に研究・分析する焼肉作家、小関尚紀氏の著書『知ればもっと美味しくなる!大人の「牛肉」教養』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集して、国産牛と和牛の違いに迫ります。
「国産牛」=「和牛」ではない
私はスーパーの精肉コーナーが大好き。精肉コーナーで牛肉のパックを眺めるひとときは、何物にも代えがたいです。
さて、牛肉のパックを見てみると、必ず産地が表記されていますね。「アメリカ産」や「オーストラリア産」、まれに「タスマニア産」なども見かけることがあります。輸入牛の場合、どこの国から輸入されたものなのかがすぐにわかるので安心です。
しかし、精肉コーナーをよく見渡してみると、「和牛」と表記されているパックがある一方で、「国産牛」と表記されているパックもあることに気がつきます。
それでは、「和牛」と「国産牛」の違いは何でしょうか。同じ日本の牛ではないのか、と疑問に思うかもしれません。
まずは「和牛」について説明しましょう。「和牛」とは、日本の在来種をベースに飼育された食肉専用の牛のことで、
・黒毛(くろげ)和種
・褐毛(あかげ)和種
・日本短角(たんかく)種
・無角(むかく)和種
の4種類を指します。また、この4種間を交配させてできた牛も「和牛」と呼ばれます。テレビ番組などでよく耳にする「三大ブランド和牛」とは、神戸ビーフ(兵庫県)、松阪牛(三重県)、近江牛(滋賀県)のことですが、これらはすべて黒毛和種です(近江牛ではなく、米沢牛〈山形県〉の場合もあります)。
そして、なんと和牛全体の98%以上が黒毛和種だとされています。これは、ほかの3種の和牛よりも消費者に人気で圧倒的な需要があり、黒毛和種の生産者も必然的に多くなるからです。