精肉コーナーをよく見渡してみると、「和牛」と表記されているパックがある一方で、「国産牛」と表記されているパックもあることに気がつきます。その違いはなにかご存知でしょうか? 本記事では、2005年に本格的に焼肉にハマって以来、年間100店舗以上もの焼肉店を巡るだけでなく、生産現場にまで足を運び、牛や餌に関する知見を深め、肉の焼き方や部位の特性を独自に研究・分析する焼肉作家、小関尚紀氏の著書『知ればもっと美味しくなる!大人の「牛肉」教養』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集して、国産牛と和牛の違いに迫ります。
「国産牛なら安全」に潜む罠
一方の国産牛ですが、簡潔にまとめると、品種に関係なく全肥育期間の半分以上を日本国内で肥育された牛の総称になります。この定義に当てはめると、じつは外国で生まれた牛でも、日本での肥育期間が長ければ「国産牛」の扱いになります。
例えば、アメリカで生まれた牛がそのままアメリカで10カ月肥育されていたとしても、その後、日本で14カ月肥育されていれば「国産牛」と呼ばれるわけです。
「国産牛なら、ずっと国内で肥育されているから安心」と思っていた人は、この定義には少し驚きますよね。
国産牛を支える「乳用種」と「交雑種」
ちなみに、国産牛の多くを占めるのが、乳用種と交雑種です。乳用種とは、乳牛として世界中で多く飼育されている、いわゆる「ホルスタイン種」のこと。生乳を生産するための牛で、体の白黒の模様は市販の牛乳パックなどでも見たことがあるかと思います。
一方の交雑種ですが、その多くは、黒毛和種とホルスタイン種の交配によって生まれた牛です。「F1牛」とも呼ばれたりします。
なぜ黒毛和種とホルスタイン種を交配させるのかというと、交配させることで和牛ほどではなくとも肉の脂質が多くなり、霜降りになりやすくなるからです。また、肉量が多くなり、病気にかかりにくくなるというメリットもあります。
このように「和牛」と「国産牛」は、異なる基準で分類され、それぞれに独自の魅力があります。どちらが優れているということではなく、大切なのは、それぞれの特性を理解し、自身の好みや料理の用途に合わせて賢く選ぶことです。
私は、特別な日のご馳走には「和牛」、毎日の食卓には手頃で用途が広い「国産牛」といった使い分けをしています。
「和牛と国産牛って同じだよね」は間違いです! 「和牛」「国産牛」のそれぞれの特徴を理解して、用途や好みに合わせてお肉を選べるようになりましょう。
小関尚紀