一般的に「牛肉は、鶏肉や豚肉と比べて高い」という認識があるかと思います。では、なぜ牛肉の値段はほかの肉より高くなっているのか、みなさん考えたことはありますか? 本記事では、2005年に本格的に焼肉にハマって以来、年間100店舗以上もの焼肉店を巡るだけでなく、生産現場にまで足を運び、牛や餌に関する知見を深め、肉の焼き方や部位の特性を独自に研究・分析する焼肉作家、小関尚紀氏の著書『知ればもっと美味しくなる!大人の「牛肉」教養』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集して、牛肉の値段が鶏肉や豚肉に比べて高価な理由に迫ります。
牛肉の値段は、なぜ高いのか
ある日、近所のスーパーへ出かけたときのこと。精肉コーナーで、鶏肉、豚肉、牛肉を見ていました。ふっと、それぞれの値段を見てみると、
鶏肉(むね)……100gあたり100円
豚肉(ロース)……100gあたり200円
牛肉(ロース)……100gあたり1,000円
牛肉の値段だけ、高すぎ! 思わず声が出そうになりました。
一般的に「牛肉は、鶏肉や豚肉と比べて高い」という認識があるかと思います。では、なぜ牛肉の値段は、ほかの肉よりも高くなっているのでしょうか?
「それはズバリ、美味しいからです!」と声高らかに断言したいところですが、食には好みがありますから、一概には言えませんね。
注目するべきは、「飼育期間」と「飼料の量」です。じつは鶏、豚、牛のそれぞれの生産サイクルを知ると、なぜ高価になるのかが簡単に理解できるようになります。それぞれの出生~出荷にかかる日数、体重を1㎏増やすのにかかる飼料の量を比較してみましょう。
まずは鶏です。三つの中では一番安価なので、家計の強い味方ですね。
卵がふ化するまでにかかる日数は、ブロイラー(食用の若鶏(わかどり))を例にすると約21日です。そこから素ひなとして養鶏場で飼育され出荷されるわけですが、そこでの期間は、小型サイズで約35日、大型サイズでも約50日となっています。また、ブロイラーが1㎏体重を増やすのに必要な飼料の量は、約2㎏です。
つまり、ふ化してから商品化されるまでの期間が2カ月もかからず、牛や豚に比べてエサ代もかかりません。
次に豚を見てみましょう。
豚の妊娠期間は114日程度で、1回の出産で10頭程度の子豚を産みます。そして、生後65日~70日で素豚と呼ばれるようになり、生後6カ月で出荷されます。1㎏体重を増やすのに必要な飼料の量は、約3㎏です。
つまり、鶏と比べると飼育期間が長く、必然的にエサ代もかかるわけですが、一度の出産で10頭も産めるため、効率よく育てることができます。