退職金は、これからの生活を支える大切な資産です。ただ、日本ではその大金を狙った悪質な勧誘・詐欺が横行しています。勧誘にはさまざまなアプローチがある一方、悪質がどうかを見極める具体的な判断基準として、ある共通点があることはご存じでしょうか。「自分は大丈夫」と思っている人ほど気をつけてほしい具体的な勧誘事例と、その対処法・予防策について、大竹麻佐子が解説します。
儲かるに決まってるじゃないですか...平日昼の喫茶店に響く自信満々な声。高級腕時計にパリッとしたスーツ、"エリート風”の30代男が語る「退職金2,000万円の運用プラン」の危うさ【CFPが警告】
60歳からは「運用」ではなく「防衛」の意識を
退職金を運用して増やしたいと考える人は多いでしょう。もちろん、投資を否定するつもりは決してありません。投資商品について、きちんと理解したうえであれば、たとえ損失が出ても、それは経験値として納得感が得られるでしょう。
一方、気をつけたいのがよくわからないまま投資をして、よくわからないまま資金が消滅してしまう、というケースです。60歳からは「増やす」よりも「守る」意識を持ちましょう。
具体的な「資産防衛策」
1.生活費の基盤を確保:まずは生活に必要な資金を確保しましょう。これまでの給与収入に代わる年金がどのくらいもらえて、どのくらいの支出が想定されるのか、支出が収入を上回るようであれば、不足分を退職金などの資産から取り崩すことになります。ざっくりで構わないので、たとえば100歳まで生きる場合、といった観点で考えてみましょう。
2.資産の分散:生活資金が確保できていれば、余剰資金を投資に回すことも選択肢です。ただし、株式や外貨だけに頼るとリスクが高まります。債券や投資信託など、金融商品の分散を意識しましょう。なお、貯蓄と投資のバランスは、それぞれの生活スタイルや経験、価値観にもとづいて判断することをおすすめします。
3.医療・介護などのリスク対策:年齢を重ねると医療費や介護費用が増えていきます。保険で備えるのか、貯蓄で備えるのかはそれぞれの判断ですが、いずれにしても将来のリスクに備えることが大切です。
4.お金の使い道を設計:老後の旅行や趣味、子どもや孫への支援など……使い道を明確にすると資金の配分も決めやすくなります。目的があれば、不用意な投資話に心を奪われずに済むかもしれません。
断定表現には要注意
退職金には、これからの生活資金であるとともに、これまでの会社員生活に対する慰労の意味もあります。大切な資産であるからこそ、自分や大切な人のために有意義に使いたいものです。
「絶対に儲かる」と言われたら、まず疑うこと。
「いますぐ契約を」と迫られたら、一歩引くこと。
冷静さこそが最大の防御策です。そして、老後資金を安心して活かすために、「増やす前に守る」という意識を忘れないようにしましょう。
大竹 麻佐子
ゆめプランニング 代表
ファイナンシャルプランナー(CFP🄬)
相続診断士